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絶滅危惧種なお仕事ガイド

絶滅寸前の路上靴磨きが平成維新!
時代錯誤?なオシゴトに若者が続々参入するワケ

曲沼美恵 [ライター]
【第8回】 2010年10月14日
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 JR御徒町駅で降りた時のこと。木の板に「靴磨き 500円」と書いた看板を見つけた。

 見ると、靴を磨いているのは高齢のおじさん。幸いにも筆者はその日、革靴を履いていた。

 「あのぉ、次、いいでしょうか?」

 先客が立つタイミングを見計らい、靴磨きのおじさんに申し出た。生まれて初めての路上靴磨き体験、である。

 見慣れない客に驚いた様子で、おじさんは「磨くの?」と確認してくる。「はい」と答え、先ほどの客が座っていた折りたたみ椅子に腰かける。

 「じゃあ、ここに足、のせて」

 言われるがまま、小さな台に右足をのせる。

 あぐらをかいて座るおじさんの左横には、5段の引き出しからなる道具箱が置いてある。手前には、使い古したブラシが何本も入った缶。クリームやワックスも、数え切れないほど種類がある。

 おじさんはまず、ブラシでササッと靴の汚れをとると、乳白色の液体を塗った。その様子を眺めながら、「じつは、かくかくしかじかで靴磨きのことを取材していまして……」と事情を説明し、取材を開始する。

都内の路上靴磨き職人はわずか15名?
自然消滅的に絶滅する日も遠くない

 「昔は都内に500人くらい、靴磨きがいたらしいんだよ。ここだけで、6人はいた。だけど、今はオレ1人。みんな、死んじゃった。だって、戦後すぐの頃からだもん」

 おじさんの名前は、「モトジマさん」という。生まれは富山県で、御年80歳。終戦間もなくの1948年(昭和23年)に上京し、最初は靴を作る会社に勤めた。

 「だけどさ、1年で辞めちゃった」

 「なぜですか?」

 「靴ってさ、注文靴を作れるようになったら一人前なのよ。職人にはなったんだけど、腕が悪くて、会社が既成靴しか作らせてくれなかったのよ」

 一人前の靴職人になれないなら、靴磨きになろう。20歳のモトジマさんはそう心に決めて、靴磨きの道に入った。

 路上で靴を磨く商売をするには、所轄の警察署から発行される「道路使用許可」と、都道府県が発行する「道路占用許可」が必要だ。新規で許可をとるのは難しく、現在営業している人たちが亡くなると、自然消滅的に路上での靴磨きは消える運命にある。

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曲沼美恵[ライター]

1970年生まれ。大学卒業後、日本経済新聞社に入社。2002年からフリーに。近年はビジネス誌やウェブサイトで、ルポルタージュやインタビュー、コラム等を執筆。近著に『メディア・モンスター:誰が黒川紀章を殺したのか?』(草思社)がある。仕事に関する情報はブログでも紹介中。「ニュース」より「人」に興味あり。

 


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「もう食えないかも」「このままだと絶滅」と言われる産業に従事する人々のなかにも、実は意外にしぶとく生きている人たちがいる。日本一でもなく、世界一でもない、「最後の下駄屋になること」を目指して働く職業や人々を追いかけ、「崖っぷちの中に見える希望」を探る。

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