近年、商品やサービスの機能や価格だけでなく、顧客体験(CX:Customer Experience)を高めることが重要であることは広く浸透してきている。優れたCXの実現のためには、企業活動が顧客中心の考え方に基づいて継続的に行われる必要があり、まずはその活動を支える従業員自身が目標に共感しコミットしていること(従業員エンゲージメント)が大前提である。そのためCXに取り組む企業は必然的に従業員体験(EX:Employee Experience)を重視するようになってきているが、このCXとEXの両輪を回し続けるのは容易ではない。アジア最大手のマーケティングリサーチ会社(※)であるインテージでは、顧客と従業員の双方のエンゲージメントを図る独自の「エンゲージメント指標」の開発に着手。この指標も活用して、企業がCXとEXを継続的に改善する、CXマネジメントを支援している。
CXの向上にはEXの向上も欠かせない
なぜ今、CXとEXの重要性が高まっているのか。インテージ事業開発本部のユニットディレクター、吉田祐介氏はその背景について次のように話す。
「そもそもCXを高めるということは、顧客がその商品・サービスを利用する文脈に合った体験を提供することで、感情的な絆(顧客エンゲージメント)を強化していくことです。そのためには、顧客理解に基づいて、あらゆる顧客接点でその時々に最適な提案をしていくことが重要になります。
しかしながら、顧客ニーズや状況は多様で変化していくため、全てを事前に予知できるものではありません。そうなると、顧客と直接相対する店員やオペレーターはもちろん、ウェブサイトやアプリなどの設計や運用を行う従業員にも、自社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に基づいて自律的に行動することが求められていきます。
このような自然の流れで、今後の企業成長には、顧客と従業員のエンゲージメントを同時に高めていくことが非常に重要になっているのです」
その際、まず必要になるのが、顧客と従業員のエンゲージメントの現状を可視化すること。客観的に判断できる「エンゲージメント指標(サーベイ)」が必要になる。しかし、企業(自社)に対する愛着や思い入れなどを数値化し、改善のための打ち手を明確化したり施策の効果を検証したりするのは容易ではない。しかも、従業員エンゲージメントに関しては統一した定義や分析方法が確立されていないのが現状だ。
しかし、あえてこの難題に挑んでいるのが、独自のエンゲージメント指標の開発に着手し、CXとEXの改善を両輪で推進するCXマネジメントを支援しているインテージだ。
実際、どのようなエンゲージメント指標を活用しているのか。その特徴や優位性について見ていこう。
※「ESOMAR's Global Top-50 Insights Companies 2023」に基づく(グループ連結売上高ベース)