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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

中国が確保したパキスタン港湾運営権の戦略的重要性

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第285回】 2016年8月4日
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 中国が海外の港湾に基地を作る作戦に力を入れている。そのなかの重要なプロジェクトはパキスタンのグワダル港の建設と運営権の確保だ。

 約700キロメートルに及ぶ海岸線をもつパキスタンには、カラチ港とグワダル港という2つの重要な軍港がある。カラチは東海岸でインド側にあり、グワダルは西海岸で中東の大国・イラン側にある。グワダルはもともとパキスタン西部のバローチスターン州にある小さな漁村で、パキスタンとイランの国境まで約120キロメートル、南はインド洋のアラビア海に面し、ペルシャ湾の喉元に位置し、アフリカやヨーロッパから、紅海・ホルムズ海峡・ペルシャ湾を経て、東アジアや太平洋エリアに向かう海上の重要な航路を押さえる位置にある。

 世界的に石油供給の主要な交通路であるホルムズ海峡までの距離は約400キロメートルしか離れていない。東アジア国家の中継貿易や中央アジアの内陸国家が海に出るための玄関口となることができる。その戦略的な価値は言うまでもないものだ。

 しかし、グワダル港は長年にわたってさまざまな国の手を転々としてきた。18世紀はオマーンの飛び地だったが、1958年にパキスタンに売却された。その後、もう少しでアメリカに持って行かれそうになったが、2007年にシンガポールの企業が港の管理権を取得、2012年にシンガポールが撤退した後、中国が運営する港となった。

軌道に乗り始めた中国・パキスタン経済回廊

 グワダル港の委譲は中国・パキスタン経済回廊(CPEC)が「一帯一路(陸と海のシルクロード経済圏)」戦略のテンプレートとして軌道に乗り始めたことを意味している。

 グワダル港の完成と運営は、立ち後れたバローチスターン州、ひいてはパキスタン全体の経済発展を促すことになるだけでなく、アフガニスタン・ウズベキスタン・タジキスタンといった中央アジア内陸国家に最も近い海の玄関口ともなり、こうした国々とスリランカ・バングラデシュ・オマーン・アラブ首長国連邦・イラン・イラク、さらには中国の新疆など西部地区とを結ぶ海運任務を担い、積み替え・倉庫保管・輸送の海上中継拠点となる。さらに将来的には、グワダル港には近代的な海浜都市が誕生し、空港が作られて航空路線で各国とつながる。やがてグワダルは首都イスラマバードの半分ほどの規模となるだろうとまで予測されている。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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