Photo by Yoshihisa Wada

 公益社団法人日本プロサッカーリーグ、すなわちJリーグは、今年の11月に法人設立25周年を迎える。リーグ発足以来掲げてきた「百年構想」の、"第一四半期"が終了するという区切りの年となる。

 7月20日、Jリーグは英国のパフォーム・グループが提供するスポーツのライブストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」と協業契約を結び、2017年シーズンから10年間にわたって、J1、J2、J3リーグの全試合をDAZNで生中継することを発表した。

 パフォーム・グループはロンドンを本拠として、世界100ヵ国を越える国々でインターネットを使ったスポーツコンテンツの配信やメディアサービスを行う世界最大級のプレーヤーだ。

 今回の契約金額は10年間で約2100億円。これは日本のスポーツ界初と言える「長期大型」の放映権契約となる。重要なのは、Jリーグがスタートしてから初めて、動画の制作著作権をJリーグ自身が保有することができたということ。Jリーグが主体となり、例えば地上波各局やクラブオウンドメディアにも、ハイライト映像など試合に関わるコンテンツを柔軟に提供できるようになったのだ。つまり、よりJリーグ全体の露出を高めるための施策を打ちやすくなるということだ。

 そして 10年間2100億円というのは、いわば未来への投資原資である。日本サッカーのレベルアップを図っていくことは当然として、Jリーグがいかにこの国のスポーツ産業の成長を牽引できるか。楽しみであると同時に、責任の重さをかみしめている。

 さらに、NTTグループを含めた3社で「スマートスタジアム事業」を提携した。日本中のスタジアムを高密度Wi-Fi化し、スタジアムでリアルタイムにリプレイ動画が見れたり、飲食の注文ができたりする環境を整備したい。さらに近隣の商店街にもファン・サポーターの送客ができるよう、ホームタウン全体でのデジタル化も進めていく予定だ。

 これにより、スポーツの新しい楽しみ方を提案できることと思う。いわば、サッカーをスタジアムやお茶の間で観戦するだけでなく、「街に出ていくサービス」に転換していくわけであり、しかもそうした挑戦が世界に先駆けて日本から始まるのだ。

 今回の契約で、我々は「お金持ちになった」と錯覚してはいけないと思っている。逆に多額の投資に対し、ビジネスとして見合う価値を返していかなければいけない。ポジティブな意味で、身の引き締まる思いだ。

 とはいえ、これだけ大きな契約を締結できたことは喜ばしく、私は今、実に晴れやかで希望に満ちた気持ちだ。しかし、Jリーグのチェアマンに就任した2014年1月31日には、とても明るい気分ではいられなかった。一方で、当時の危機感があるからこそ、今があるとも言える。

 まずは就任当時のことを振り返ってみたい。