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アイリスオーヤマ社長 大山健太郎

どんな時代でも利益を出し続ける経営の仕組み

大山健太郎 [アイリスオーヤマ社長]
【第2回】 2016年4月11日
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Photo by Yoshihisa Wada

 アイリスオーヤマが、1万6000アイテムの商品を揃え、毎年1000アイテムもの商品開発を続けるようになったのは、「どんな時代環境でも利益を出せる会社になろう」と決意する苦しい経験があったからだった。決意の実現のために、「ユーザーインの商品開発」「メーカーベンダー」「デパートメントファクトリー」「セールス・エイド・スタッフ(SAS)」などの独自の仕組みにたどり着いた。4つの取り組みは、現在のアイリスオーヤマの競争優位となっている。

選択と集中は、経営と言えるものなのか

 昨日、魚が釣れた場所で今日も釣れるとは限らない。アイナメが釣れないならばカレイを釣ればよい。漁場も魚種も、満遍なく魚のいるところに船を持っていける船頭であれば、大間のマグロ釣り師のような大金を手にできなくてもコツコツと生きていける。

 一見、非効率に思えても、そんな漁場にはマグロ漁に大金をつぎ込むような漁師は入ってこない。産業で言えば、単品・大量生産の規模を追う会社とは真逆に、多品種・少量で利益を確保できる仕組みがあれば不況期にも生き延びていける。

 アイリスオーヤマは、企業理念の第1条で「会社の目的は永遠に存続すること。いかなる時代環境に於いても利益の出せる仕組みを確立すること」と宣言している。その理由は後述するが、理念を実現するために「ユーザーイン」の商品の拡充、「メーカーベンダー」「デパートメントファクトリー」「セールス・エイド・スタッフ(SAS)」などの仕組みの確立に努力してきた。

 最近の企業経営では、「選択と集中」が常識になった。しかし選択と集中は、「企業」という視点だけで考えられているものなのではないか。選択と集中により管理は楽になるし、優秀な人材も効率的に育てられるようになるだろう。リストラも正当化される。単品・大量生産型の規模のビジネスを追えば、必然的かつ合理的に「選択と集中の戦略」になる。

 だが、選択して集中した分野がトレンドダウンしたり、海外から新しい商品が入ってきたらどうなるのだろうか。効率のよさとは、裏を返せばリスクが大きいということだ。

 「1兆円の売上で営業利益が500億円」。しかし500億を稼いでいるのは2~3部門で、あとは皆赤字。PLは黒字でも強い事業の背後には、再生できない事業がごろごろして経営の足を引っ張る。それを「環境が悪く仕方がない。なんとかしようとしている」と株主に説明する。そういうのを「経営」と言えるのだろうか。

 一方、アイリスオーヤマの商品には、利益率3~5割を弾き出して大儲けする商品はない。そんな大儲けできる商品ならば、価格を下げて圧倒的なシェアを取りに行くのが先だ。

 商品は、基本的には「利益率をきっちりとキープすることが大事だ」としている。単品の損益管理を徹底し、利益率が落ちてくればコストダウンの方法を編み出したりバージョンアップをする。「年間1000点の開発商品」と、ちょっとPR的に発信するが、実はバージョンアップ商品も含まれている。

 ただ、たとえ購入者が1000人しかいなくなっても利益が確保できるならば売り続ける。単品・大量生産にはなじまない非効率な世界だ。だが、こんな非効率な世界には誰も入ってこない。そこが狙いでもある。

 グループ売上高が3000億円の程度のアイリスグループが、理念の実現と継続をなすために、大手企業とはまったく違う経営が必要だった。それはあたかも、小さな敷石がびっしりと足元を固める参道のような経営だ。

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大山健太郎 [アイリスオーヤマ社長]

1945年(昭和20年)大阪府生まれ、64年大阪府立布施高校卒業。同年、ガンで倒れた父親の後を継ぎ、プラスチック成型加工の大山ブロー工業所(現アイリスオーヤマ)代表に就任。71年株式会社化し、翌年宮城・大河原工場を建設。石油ショック後の経営危機を経て、81年消費財分野に進出、ホームセンター向けプラスチク製品のトップメーカーに育てた。地元、宮城では実践的な経営理論の論客として知られる。


アイリスオーヤマ社長 大山健太郎

爆発的ヒットとなった「クリア収納ケース」をはじめ、生活を便利にする商品を次々と生み出しているアイリスオーヤマには二つの大きな信念がある。「常識にとらわれないイノベーション」と「ユーザーインのものづくり」だ。総アイテム数1万6000点、毎年1000点の新商品開発を実現する開発力はどのようにして創造されているのか。またそれを支える大山健太郎社長の経営戦略、基本哲学とはどのようなものか。

「アイリスオーヤマ社長 大山健太郎」

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