安倍晋三首相は、内閣改造・党役員人事を行い、第3次安倍再改造内閣が発足した。首相は最優先課題は経済だとして、麻生太郎副総理・財務相や菅義偉官房長官、石原伸晃経済財政・再生相ら主軸の経済閣僚を留任させて、「成長戦略を一気に加速する」と宣言した。
「安倍人事」最大の焦点
幹事長交代を考える
今回の「安倍人事」の最大の焦点は、自民党幹事長の谷垣禎一氏から二階俊博氏への交代だろう。安倍首相は、ケガで入院している谷垣幹事長を、「余人をもって代えがたい」と続投させようと検討したという。しかし、谷垣幹事長が固辞したため、二階総務会長を後任に充てる人事を決断した。この交代が、今後の経済政策の運営や政局に与える影響は大きい。
この連載では、谷垣幹事長と二階総務会長の関係を論じたことがある(第89回p3)。それは、財政再建派の重鎮・谷垣幹事長と、族議員のリーダーで「国土強靭化推進」の二階総務会長は「水と油」のように思われるが、意外にいい関係だということだった。国土強靭化の積極的財政出動策は、10%への消費増税を見込んだものだったからだ。消費増税の必要性について、谷垣幹事長と二階総務会長の考えは、実は一致していたといえた。
実際、アベノミクスは財務省と財政再建派によって進められてきた(第82回)。「第1の矢(金融緩和)」は財務省出身の黒田東彦日銀総裁、「第2の矢(財政出動)」は財務省主導だった(第61回p2)。アベノミクス「第1の矢」「第2の矢」は増税実現の環境整備のためだったともいえるのだ。
もっとも、財政再建派の政治家は、将来の増税の布石とはいえ、「第1の矢」「第2の矢」のために財政再建が遅れることに不満だった。だが、谷垣幹事長は、財政再建派の不満を抑える役割を果たしてきた。誠実な人柄で知られ、政界での人望も厚い谷垣幹事長(第44回)が、アベノミクスを支持する姿勢を貫いていたために、財政再建派は、表立ってアベノミクスに反旗を翻せなかったのだ。
しかし、2014年4月の消費税率5%から8%の引き上げこそ、予定通り行われたが、10%への引き上げは2015年10月、2017年4月と続けて延期された。しかし、谷垣幹事長は、首相の決断に対して、全く無力であることを晒してしまった(第133回p5)。
谷垣幹事長は、昨年末の消費増税に伴う軽減税率導入決定の際にも、安倍首相の決断に対して無力であった(第121回p2)。この谷垣幹事長の「非力」さに対して、財政再建派の不満が溜まりつつあった。財政再建派の急先鋒・園田博之氏は、「このまま谷垣幹事長を支えても無駄だ」と吐き捨てていたという。