参議院選挙の選挙戦は後半戦に入った。
筆者は、残念なことに、今回、与党、野党のいずれをも積極的に応援したいとは思っていない。しかし、この選挙を通じて、より良い政策が実行されるようになる確率が高まるといいと思っている。以下の拙稿は、仮に野党側の立場を取るならという仮定で書いているが、筆者が野党側の議論と政策を全面的に支持しているわけではないことをご理解いただけると幸いだ。良い政策が実行される環境を得るためには野党側の戦略があまりに拙く、かつ野党が弱すぎる力関係は問題だと筆者は考えている。
以下、主に野党の利益の側から今回の参院選を見る。
民進党を筆頭とする野党勢力は、共産党の英断とも言える選挙共闘戦略(主に一人区で野党側の候補者を絞るために、共産党の候補者擁立を断念した)によって、「勝負になる」選挙区を増やしているようには見えるが、選挙の争点提示が成功していない。
この争点提示の失敗(と筆者が思う点)は、与党側に過剰な余裕を生んでおり、与党が政策を改善するインセンティブを失う懸念を生んでいる。
改憲に必要な勢力を確保したいと考えているらしい安倍政権側は、改憲の是非を争点とするのではなく、一般に「アベノミクス」と呼ばれている経済政策の成果を強調して「この道」を進むか否かを訴えている。
他方、野党第一党である民進党は、アベノミクスは失敗であったとして、安倍政権の経済政策面を批判しようとしているように見える。この対決の構図は、どちらに有利なのか。
アベノミクスは順調ではないが失敗ではない
民進党の主張に耳を傾け、さらに昨今の経済情勢を見ると、「アベノミクスは上手く行っていないのではないか?」という疑問を持つ人が多くても不思議はない。
先般、英国の国民投票でEU離脱が決まった。これによって、円高と株価下落が起こり、経済が順調ではないというイメージは一層強化された。
実際、今年に入ってからの日本経済はとても順調だとは言えない。成長が鈍化し、賃金の伸びは期待外れで、かつて安倍政権が誇った株価は低迷し、アベノミクスが目指したはずの物価上昇(マイルドなインフレ)の達成が遠のいているように見える。