投信販売をめぐるトラブルが増えているという。10月18日付「朝日新聞」の記事を読み、「まだやっているのか」と呆れたが、意外感はなかった。
1998年から銀行窓口での投信販売が始まって、今後は「回転売買」をやめて、「残高営業」が主流になるといわれ、投信販売が改善したかに見えた時期があった。しかし、銀行が投信に導入しやすい顧客にひととおり当たり終えると、既存顧客のファンド乗り換えで稼ごうとするのは当然のことだ。
ファンドを買わせると少なからぬ手数料が入り、セールスマンは数字で評価され、目標数字(実質的な「ノルマ」)と支店の計画に追われるのだから、ビジネスの構造は証券会社となんら変わらない。
記事によると、公募株式投信を顧客が保有する平均期間は、今年の8月時点で2年11ヵ月と、なんと昨年より7ヵ月も短いという。2008年は4年7ヵ月だったから、急速に短縮化している。
トラブルの対象として多いのは、案の定、高齢者だ。大手銀行が1700万円の定期預金を持っていた認知症の女性(82歳)に1000万円の投信を買わせて、約4割が損失になったとして訴訟になっている例もある。後の損は意図的なものではないとしても、銀行員が手数料分の振り込め詐欺をやっているのと大差ない。
今後、高齢者が増えて、同時に資産は高齢者に偏在しているから、高齢者を投信セールスからいかに守るかが大きな課題になる。だが、改善させることは容易ではない。