永用万人
Photo by Kazutoshi Sumitomo
個人のデジタルカメラで撮った写真を、インターネット上にアップロードすれば、1枚5円でプリントし希望のあて先まで郵送してくれる──。
しまうまプリントシステム社長の永用万人は、1枚10円前後のインターネットデジタルプリントサービスの市場に、1枚5円という挑戦的な価格設定を打ち出した異端児だ。
町の写真店でプリントを頼むと、平均1枚30円が相場だ。だが、人件費や店舗の土地代が発生しないインターネット上では、低価格で同じサービスが提供できる。同社は安さと同時に「高品質」を追求し、トップシェアを誇る。その高品質とは何か、どのように実現しているのか。
本社は鹿児島県日置市の自社プリント工場内にある。「ただ土地勘があったから」と、同県出身の永用は言うが、一見相反するかのように思われる低価格と高品質実現の秘密は、この工場内にある。
1時間に約2500枚プリント可能な写真ラボ機21台に加え、自動給水、自動廃液処理システムが備えられているのだ。インクを吹きかけることによって印刷する家庭用のインクジェットプリンタと違い、銀塩で写真を仕上げるプロ仕様だ。
当然、巨額の設備投資は避けられなかった。それでも低価格で提供できている理由は、最終的な値段を大きく左右する、印画紙と薬品を大量に安く仕入れているためだ。加えて、「人の手を介さないことを徹底的に追求した」結果である。
受注から梱包、あて名印字に至るまで一貫した自動化システムを開発した。
たとえば永用には、「写真は個人的な思い出をカタチにしたもの」であるという思いが強い。インターネットで注文し、自動的に写真がアップロードされるのに、梱包の段階で他人の目に触れるのは腑に落ちない。一度で高速処理が可能な自動梱包機があれば、人の手を介さず、低コストが実現できるのではないかと考えた。そこで大活躍したのが、現在特許出願中の、「豆腐用プラスチック容器」を改良したオリジナル梱包材である。
伝統的な写真印刷技術と最新のシステムが生んだ
新たなビジネスチャンス
独自で開発した写真梱包材。注文した写真はこれに梱包され、届く。豆腐用のプラスチック容器を改良したこのオリジナル容器は、軽さと防水性だけでなく、配送の際起こりやすい「角つぶれ」を防ぐ
写真の梱包材の開発には、大変な苦労を重ねた。あらゆる容器を検討し尽くしたかと思ったとき、日常の食卓の風景から豆腐用プラスチック容器がひらめいた。「これなら軽く、防水性も高い」。メーカーに容器の生産を相談、同時に独自の自動化システムの開発を進めた。わずか3ヵ月で実現にこぎ着け、サービスを開始。その後約2年かけて利用者を増やす一方、じりじりと現在の5円まで価格を引き下げることに成功した。