理研の研究者は、4月にマウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、毛包などを含めた皮膚組織全体の再生に成功した辻孝チームリーダー。ただし、このたびの共同研究は、iPS細胞による他家細胞移植ではなく、自家細胞移植だ。正常な毛髪が残る頭皮から取り出した上皮性幹細胞と間葉性幹細胞から「再生毛包原基」を作り、培養して移植する。

 京セラは、微細加工技術を生かした細胞加工機器を開発する。

 両グループの違いを簡単に言えば、資生堂側は弱った毛包を再び元気にする研究。産毛のようになった頭髪が再び太く長く伸びる。片や、京セラ側のそれは、毛包そのものを作り出す研究だ。

治療費は新車1台分?

 気になる実用化の時期だが、両グループとも、早くて20年以降を目標として掲げる。

 もっとも、達成できるかは未知数だ。資生堂は当初、18年度以降の実用化を掲げていた。それが臨床研究に最低でも3年を要するため、20年に先送りされた。技術的なハードルがより高い理研の方も「実用化には10年近くかかるのではないか」(再生医療に詳しい研究者)という声もある。

 なお、02年に米バイオベンチャーを77億円で買収し、毛髪の再生医療の臨床試験に入っていたアデランスは、14年度の実用化を目指していたが頓挫。13年5月に「事実上、撤退した」(業界関係者)。

 加えて、費用の問題も立ちはだかる。自由診療のため全額自己負担の上、「既存の再生医療製品の価格を見れば、当初は数百万円掛かる」というのが関係者の共通見解。やすやすと薄毛根絶とはいかないようだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)