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カツラーは今日も闘っているのだ!

カツラーになると決断した27歳の春
最大の敵は「無知」だった

小林信也 [作家・スポーツライター]
【第2回】 2010年2月4日
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 何も知らなかった。

 カツラを初めて買うとき、私はカツラについてほとんど何も知らなかった……。

                 ※

 まもなく28歳になる春の休日。朝刊を開くと、カツラの宣伝が目に飛び込んできた。

(カツラじゃなくて、育毛診断か……)

 私の心がいつになく揺れた。普段から見慣れた広告に、その日は激しく背中を押された。

 「電話するよ」

 私はまだパジャマ姿の妻K子にきっぱりと言った。新婚2年目の春だ。

 「ホントにカツラにするの?」

 「違うよ、まずは育毛診断だよ。いきなりカツラにするわけじゃない」

 再考を促す家内の眼差しに背を向けて、私は受話器を取った。

 いよいよ忍び寄るハゲの恐怖は、放置できない限界に近づいていた。

 日常、何気なく鏡を見ると、頭のてっぺん、明らかに地肌が透けて見える! その度合いが確実に深刻化していた。K子に確かめると、1年前には「気にしすぎだよ」と答えが返ってきた。それが、なんとも言えない表情で髪をみつめるだけに変わっていた。

 「小林くん、けっこう来てるねえ」

 仕事先で、言われたくもない相手から頭を覗かれる経験もするようになった。

(わかるんだ、明らかにボクの頭、薄くなっているのが他人にもわかるんだ)

 そうなったら居ても立ってもいられない。

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小林氏の最新著書「カツラーは今日も闘っているのだ!」発売中

20代から薄げに悩み、ある日思い切ってカツラを選択した著者。が、スポーツライターなのにアウトドアを避けるようになり、テレビ出演も断わり、どんどん内向的に。カツラーの悩みと葛藤、業界の掟などを面白おかしく綴った一冊。

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小林信也 [作家・スポーツライター]

1956年新潟県長岡生まれ。慶応大学法学部卒。高校では野球部の投手として新潟県大会優勝。大学ではフリスビーの国際大会で活躍。大学生の頃から『ポパイ』編集部スタッフライターをつとめ、卒業後は『ナンバー』のスタッフライターを経てフリーライターに。2000年に自らカツラーであることを著書『カツラーの秘密』でカミングアウト。著書は他に『高校野球が危ない』『子どもにスポーツをさせるな』『カツラーの妻(おんな)たち』など多数。


カツラーは今日も闘っているのだ!

カツラーとは、カツラをつけている人を意味する愛称です。カツラーは人知れず、日々闘いの連続。闘う相手は、汗・風・水(温泉)、他人の視線(たぶん自意識過剰)、恋人・妻・家族、そして自分自身。そんなカツラーの哀しくも闘う姿をご紹介しましょう。

「カツラーは今日も闘っているのだ!」

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