足元の為替市場で円高が進んでいる。18日には、ドル/円の為替レートが99円台半ばまで下落した。これは、英国のEU離脱決定の影響によって、投資家のリスク回避が進んだ6月24日(1ドル=99.02円)以来の水準だ。
この背景にはいくつかの要因がある。その一つは、米国経済の先行き不透明感だ。足元の経済指標やこれまでの景気循環を考えると、徐々に米国の景気がピークを迎える可能性は高まっている。
特に、昨年の夏場以降、米国の企業業績がドル高の影響で下落傾向を示していることは要注意だ。米国企業の海外収益の割合が高まっていることを考えると、ドル高は米国経済にとって無視できないマイナス要因だ。
米国政府は、これ以上のドル高を容認することは難しい状況になっている。経済専門家の間でも、「米国政府の為替政策はドル安に転換している」との見方が有力になっている。
ヘッジファンドなど大手投資家は、米国政府の政策展開を見逃すはずはない。彼らの投資姿勢は、既にドル安・円高を想定した持ち高に変わりつつある。そうした状況を考えると、今後も基本的に円高が続きやすくなるはずだ。
また、最近の世界経済を概括すると、欧州の大手銀行が抱えるシステミックリスクなど、無視できないリスクが高まっている。それだけ投資家のリスク回避の動きが出やすく、リスク軽減から円高は進みやすいと見るべきだ。
これまで、円高はわが国の企業業績を圧迫し、景気を低迷させてきた。ここで、わが国企業は円高への抵抗力を高め、経済の活力を引き上げることを真剣に考える局面に来ている。
足元の為替市場を取り巻く経済環境
総合的に考えると円買い圧力は強まる
足元のドル安・円高は、米国の実質金利の上昇圧力の弱さに起因する部分が多い。短期的には、為替相場を動かす最も大きな要因は二国間の“実質金利”の差だ。
一般的に、投資資金は、低金利の通貨から高金利の通貨に向かいやすい。多くの投資家は高金利通貨を選好することが多いからだ。その結果、高金利の通貨は低金利の通貨に対して強含み、金利の低い通貨は弱含みとなりやすい。