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TPP参加のキャスティングボートを握る日本の農業は
GDPの0.9%、就業者数の3.8%の極小産業

原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]
2010年11月4日
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 「北京のスーパーでは、日本の農産物がすごく人気がありますよ」

 ある中国人ジャーナリストが、その様子をこう語ってくれた。「日本のリンゴを初めて見ると、これは腐っているんじゃなかいかと思う。芯のところに蜜があるでしょ。でも、食べてみてその甘さにびっくり。お米も人気がある」。北京の富裕層にとっては、安心・安全、おしいしい日本ブランドを買うのに、価格の高さは気にならないらしい。

 11月7日から、横浜で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を前に、菅政権が9日にもTPP(環太平洋パートナシップ協定)交渉への参加を、閣議決定すると伝えられている。TPP加盟への最大の障害は、農業である。菅総理が、10月1日所信表明演説で、TPPへの参加の意向を表明してから、農業団体はもちろんのこと、与党民主党内部からも反対の声が上がっている。

 TPPとは、自由貿易協定の一種。関税がなくなれば、国際競争力のない産業は不利益をこうむる。だから、日本の場合は農業団体や関係議員から声が上がる。日本は民主主義国家だから、少数意見を切り捨てるわけにはいかない。だからといって、声の大きい人々の主張ばかりが通れば、これもまた理不尽だ。

保護政策にもかかわらず
日本の農業は衰退の一途

 そこでまず、農業が日本経済のなかで、どのような地位を占めているかを、きちんと押さえることから、始めてみよう。

 TPPはシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドが参加し、2006年5月に発効した。この当初の参加国に、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが加わり、現在計9ヵ国で交渉が行われている。アメリカは来年11月のAPEC首脳会議までに、交渉妥結を目指している。

 本来、世界貿易の自由化はWTOにおいて、多国間の交渉で進められていた。しかし、この交渉がなかなか進まないために、2000年代に入って2国間で協定を結ぶFTA(自由貿易協定)が主流となり、それが重層的に世界に広がっている。FTAはモノの関税や、サービス貿易の障害を削減・撤廃するのが主眼であるのに対して、TPPはこれを発展させて、ヒト・モノ・カネの移動の自由化まで対象にする。関税も例外品目なく撤廃されなくてはならない。さらに、2国間ではなく多国間の枠組みであるところに特徴がある。

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原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]

1956年生まれ、佐賀県出身。慶應義塾大学経済学部卒。
1981年東洋経済新報社に入社。金融、証券、エレクトロニクスなどを担当。
1995年『月刊金融ビジネス』、2003年4月『東洋経済オンライン』、
2004年4月『会社四季報』、2005年4月『週刊東洋経済』の各編集長などを経て、2006年同社を退社。
2010年3月ダイヤモンド・オンライン客員論説委員、2011年10月編集長、2015年1月より現職。
主な著書に『銀行が変わる?!』(こう書房)、『素人のための決算書読解術』(東洋経済新報社)。

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