日銀の金融緩和は実体経済にプラスの影響を与えていないインフレ目標を掲げて大規模な金融緩和を行なうのは、意味があることなのでしょうか

 日本銀行は、9月の金融政策決定会合で、異次元金融緩和の総括的な検証を行なうとしている。

 その内容は、これまでの金融緩和政策が経済活動に与えた効果の分析が中心となるだろう。その際に重要なのは、「金融緩和がなぜ実体経済に影響を与えなかったのか?」を明らかにすることだ。

 異次元金融緩和政策は、為替レートや株価に対しては大きな影響を与えた。しかし、それだけのことであって、実質設備投資や実質家計消費などには、明確な正の影響を与えられなかった。

 そして、2014年秋以降は、アメリカの金融正常化によって、資源価格が下落し、為替レートが円高に進みつつある。こうして、それまで円安によって増加した企業利益の動きなどが逆転しつつある。

 金融緩和に対しては、こうした見方が広まりつつある。このような批判に答えることが必要だ。

企業は売り上げ増が期待できない状況下
設備投資は実質金利に影響されていない

 日本銀行企画局は、2015年5月に「『量的・質的金融緩和』:2年間の効果の検証」を公表している。その内容は、概略、つぎのようなものだ。

 (1)2%の「物価安定の目標」に対する強く明確なコミットメントと、これを裏打ちする大規模な金融緩和により、予想物価上昇率を引き上げた。

 (2)巨額の国債買入れによってイールドカーブ全体に下押し圧力を加えた。

 これらによって、

 ・実質金利をマイナス1%ポイント弱押し下げた。

 ・経済、物価は、概ね「量的・質的金融緩和」が想定したメカニズムに沿った動きを示している。