現在は、すべての生活保護世帯が
貸付でエアコンを保有できる

生活保護での猛暑対策補助、「想定内」は網戸まですべての生活保護世帯が貸付でエアコン保有ができるようになったものの、その返済が生活を圧迫する可能性もあります

 最初に、読者の皆様、生活保護を利用しておられる皆様に、お詫びを申し上げなくてはならない。

前回記事において、エアコンの購入を実質的に認めた2011年7月の厚労省通達と、その通達を受けて東京都が独自に実施した生活保護世帯のエアコン購入助成(2011年度のみ)を紹介した。

 この時の厚労省通達は、年金収入・就労収入のある生活保護世帯に対し、「社協から生活福祉資金の貸付を受けてエアコンを購入し、生活保護費以外の収入から返済する」という道を開くものだった。

 たとえば、生活保護費のうち生活費分が月9万円となる単身障害者がおり、障害基礎年金(2級)を受給しているとしよう。障害年金は月額6万5000円なので、生活保護費の生活費分は2万5000円となる。この人が、社協から7万円の貸付を受けてエアコンを取り付け、月1万円ずつの返済を行う場合、返済を行っている7ヵ月間、障害年金から返済するため、年金収入は5万5000円となる。生活保護は、生活保護基準までの底上げを行う制度なので、この7ヵ月間は支給される保護費は3万5000円となる。月々の生活費は合計9万円で変わらない。エアコンの電気代が生活を圧迫することにはなるのだが、「健康で文化的な最低限度」を維持しながらのエアコン保有が、一応は可能になったわけである。

 それ以前、貸付を利用してのエアコン保有に対しては、懲罰的に思える取り扱いがなされていた(前回記事参照)のに比べると、大きな方針転換ではあった。しかしこの時、年金・就労などによる生活保護費以外の収入を持たない人に対しては、何の措置もなかったことが問題だった。

 この記事を読んだ、元生活保護ケースワーカーの谷口伊三美さんから、早速、「みわさん、一世代前の情報になってますよ」と連絡をいただいた。谷口さんは、1985年より生活保護ケースワーカー業務に従事し、後に、現場のケースワーカーを指導する査察指導員の業務も担当。ケースワーカー時代より、依存症と生活保護の問題に深く関わってきた谷口さんは、現在、薬物依存症・アルコール依存症などからの回復支援でも積極的に活動している。

 今回は、現行制度を紹介し、さらに現行制度のメリットと問題点について、谷口さんの見解を紹介する。

 結論から言えば、現在、生活保護費のみで暮らす生活保護世帯でも、社協(社会福祉協議会)の貸付を受けてエアコンを保有することができる。