しかし、治療にあたる医師の立場としては、回復の可能性がゼロかどうかわからない患者の治療をやめてしまうのは医師としての倫理に反することや、どのような形であれ、現に生命を保っている患者に対し、死に直結する措置を取る行為は、殺人罪に問われる恐れがあります。

 尊厳死宣言書は、こうした医師の訴訟トラブルや家族への負担を避け、本人が人間らしく安らかに、自然な死を遂げるためのものです。

尊厳死宣言書作成の
「5つのポイント」

 尊厳死宣言書には、必ず次の条項を盛り込みます。 

(1)現代の医学で不治の状態に陥り、すでに死期が迫っていると担当医を含む2名以上の医師により診断された場合、延命措置を拒否すること
(2)本人の苦痛を和らげる処置は最大限の実施を希望すること
(3)尊厳死宣言書作成についてあらかじめ家族の同意を得ていること
(4)医師や家族に対して犯罪捜査や訴追の対象にしないでほしいと希望すること
(5)尊厳死宣言書は本人が健全な精神状態にあるときに作成したもので、本人が撤回しない限り、有効であること

 尊厳死宣言書を公に認められた書類とするには、前述のとおり、公正証書で作成します。この場合、「家族の了解書」、「家族それぞれの印鑑証明書」、「戸籍謄本」を添付する必要があります。

 ちなみに、日本尊厳死協会が、会員で亡くなった人の遺族に対して2009年に行なったアンケートによると、93パーセントの医師が「尊厳死宣言書」を受容したという結果が出ています。
 

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