2014年に公表された「伊藤レポート」では、上場企業が資本効率を重視する「ROE経営」への機運の高まりに大きな役割を果たした。ところが、ESG(環境・社会・ガバナンス)をはじめとする長期投資の観点から論考をまとめた報告書「伊藤レポート2.0」が今年10月終盤に新たに発表されたものの、ほとんど注目されていない。その理由を探った。(『週刊ダイヤモンド』編集部 竹田幸平)

2014年8月に発表された「伊藤レポート」は「ROE(自己資本利益率)8%」という目標がクローズアップされ、コーポレートガバナンス(企業統治)の世界に大旋風を巻き起こした

大旋風を巻き起こした
2014年の「伊藤レポート」

「伊藤レポート2.0」――。2017年秋、経済産業省が新たに発表した報告書はこのように題されている。だが、その存在は当事者であるはずの運用業界の界隈でも、ほとんど注目を集めていない。

「伊藤レポート」といえば、14年8月に「ROE(自己資本利益率)8%」という目標がクローズアップされ、コーポレートガバナンス(企業統治)の世界に大旋風を巻き起こした。しかし、あのいわば「1.0」とは大きな温度差がある。

 当時は「8%を上回るROEを達成することに各企業はコミットすべきである」とのメッセージが反響を呼び、大手経済誌をはじめとするメディアもこぞって取り上げたことで大きな話題となった。この約100ページにものぼる「伊藤レポート」とは、経産省のプロジェクトとして運用業界や企業のIR関係者、大学教授などが討議を重ねた末にまとめられた最終報告書のことだ。