残業ゼロがすべてを解決する
【第17回】 2017年1月3日 小山 昇

詐欺まがいで、
労基法の大切さを痛感した
不動産会社

電通過労自殺事件で強制捜査が入ったいま、中小企業も大企業もお役所も「残業ゼロ」に無関心ではいられない。
株式会社武蔵野は、数十年前、「超ブラック企業」だった。それが日本で初めて日本経営品質賞を2度受賞後、残業改革で「超ホワイト企業」に変身した。
たった2年強で平均残業時間「56.9%減」、1.5億円もの人件費を削減しながら「過去最高益」を更新。しかも、2015年度新卒採用の25人は、いまだ誰も辞めていない。
人を大切にしながら、社員の生産性を劇的に上げ、残業を一気に減らし、過去最高益を更新。なぜ、そんな魔法のようなことが可能なのか?
『残業ゼロがすべてを解決する』の著者・小山昇社長に、「労基法遵守の大切さ」について語ってもらおう。

自動車部品卸商で
「未開拓市場」を開拓した営業マン

小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/

 株式会社あきば商会(東京都/自動車部品・用品・リサイクル部品)は、足立区の「ワーク・ライフ・バランス推進認定企業」です。

 あきば商会が評価されたのは、「企業経営者と従業員が、一緒に仕事の効率化に取り組んでいる」から。

 遠藤美代子社長は、ワーク・ライフ・バランス推進企業に認定されて、「求人の応募が増えた」と言います。

 ワーク・ライフ・バランスは、「働きながら、私生活も充実させられる職場環境を整えること」です。

「人材募集をして思うのは、若い世代に限らず、20代から30代の男性で、『小さなお子様
がいる方』は、『お給料が高いこと』よりも、『残業が少ないこと』を優先している印象です。奥様と一緒に家事や育児ができるからでしょう。
 また、パートの採用も、子育て中の女性は、働きたくても勤務時間や通勤時間の融通がきかないので、ワーク・ライフ・バランスをとても気にされています」(遠藤社長)

 遠藤社長は、残業時間を減らす取り組みの中で、「労働時間の長さと実績(売上)は、比例しない」ことを実感しています。

「大切なのは、働いた時間ではなくて、仕事の中身です。当社に、育児のため、時短勤務をしている男性社員がいます。この社員は6時間しか勤務していません。営業職の中で最も勤務時間が少ないのですが、時短で働いているにもかかわらず、成績はナンバーワンです。この男性社員は、個人の対目標達成率で年間7回のトップ賞を獲りました」(遠藤社長)

 この男性社員が「誰よりも短い時間で、誰よりもいい成績を挙げている」のには、理由があります。

「今までとは違うこと」「他の営業マンとは違うこと」をしていることです。

「あきば商会は乗用車の部品を中心に扱っていますが、乗用車のアフターマーケットは縮小する一方です。
 そこでこの男性社員は、大型トラックマーケットにシフトしました。
 大型トラックは乗用車と違うため、今までのやり方や今までの知識が通用しません。
 新たに勉強をし直さなければならない。だから、誰もやりたがらない。
 彼は新しいノウハウを勉強して、今まで未開拓だった市場に足を踏み入れた。
 つまり、今までのあきば商会の常識とは違うことを始め、結果を出しました。
 現在は、彼の仕事のやり方を他の社員にも横展開しています」(遠藤社長)

詐欺まがいで、
労基法の大切さを痛感した不動産会社

 株式会社ソナーレ(東京都/不動産賃貸管理)は、楽器可・ピアノ可の賃貸物件に特化したユニークな会社です。現在、東京、神奈川、埼玉を中心に、約2000室を管理しています。

「5、6年前は、深夜まで仕事をしたので、車中で寝たこともありました(笑)。部屋のリフォーム時、業者は徹夜で工事をしますが、中には、やったフリをして逃げる人もいたから、最後まで見届ける必要がありました。繁忙期は、1週間、車中に着替えを入れて、スーパー銭湯でシャワーを浴びて、車中泊したこともあります」(丸山朋子社長)

 丸山社長は、現在、「楽器が弾けるマンション」に特化していますが、かつて一時期だけ、一般の不動産業に触れたことがあります。

「当時の私に採用権限はなかったのですが、不動産業は人の出入りが激しくて、1年間で60人雇用して、3人しか残りませんでした。不動産業界は、『流れ者』も多く、労働基準法を意識させられる事件にも見舞われたことがあります。
 ある方が、パートの面接にきたときのことです。面接時に、『エクセルもできます。ワードもできます。こんなことも、あんなこともできます』と言うので、店長が採用を決めた。その方は『2週間後から出勤したい』と申し出たので了承したが、いざ入社したら、エクセルもワードも何もできなかったのです。
 そこで、解雇することにしたら、採用後1週間を超えていたので(試用期間を超えていた)、解雇予告分の給料を請求されました。後になって、ハローワークの方から『あの人は常習だから、気をつけてください』と注意を受けたが後の祭りでした」(丸山社長)

 こうした不動産業界の悪習を断ち切るため、現在、丸山社長は、「残業の事前申請」(申請がないと残業代は支払わない)、「帰社時間の設定」(夜8時をすぎていいのは、緊急のトラブルに対処する場合のみ)、「水曜日と木曜日はノー残業デー」「シフト休を使って月1回は連休を取らせる」など、さまざまな早帰りの施策を取り入れています。

「労働基準局の方と社労士さんに協力していただき、『1年単位の変形労働時間制』も導入しています。変形労働時間制は、業務の繁閑に合わせて労働時間を少なくし、全体として労働時間を短縮することを目的にした制度です。
 繁忙期は夜7時まで、閑散期は夜6時までと決め、さらに閑散期でも、プラス1時間の固定残業代を払っています。
 夜6時で帰っても1時間余分にお金をもらえるから、社員は早帰りをする。苦肉の策ですが、効果はあると思います。今は、ほとんどの社員が夜7時から8時の間に帰っていますね。繁忙期の基準で見ると、閑散期は4日しか働いていないから、長期休暇を取ることもできます」(丸山社長)

小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/