就職できない若者の「トンデモ言動」
【第72回】 2017年1月11日 櫻井樹吏 [キャリアコンサルタント]

「自分に向く仕事」にこだわる就活生の目を開く3つのアドバイス

「自分に向く仕事」にこだわりすぎるあまり、就活の行動に自らブレーキをかけていませんか?

 「先生から見て、僕に合っている仕事って何だと思いますか?」
 「自分に向いていると思う仕事を教えてください」

 これは、学生や第二新卒からよく聞かれる質問です。その背景には、「仕事選びに失敗したくない」という強い気持ちを持っていることにあります。

 これらの質問に対して、私はいつも同じ返答をしています。

「いいですよ。ただし、その仕事を教えたら、絶対にその仕事に就くって約束してくれますか?」

 すると、ほとんどの方は引いてしまいます。なぜなら、彼らは、本気でその仕事に就くことを考えていないからです。そのうえ私が本気で言うことで、彼らは自分に向いていない仕事を紹介されるのではないかという不安を、少なからず持っているからでしょう。

 企業情報を集めたり、志望企業に応募したりすることをインターネットから行う時代の中で、「○○の仕事が自分に向いているか」という類の質問は、就職できない若者の特徴の一つでもあるのです。就職するにあたり、「仕事の向き不向きを確認しないと不安だ」という彼らの気持ちは理解できますが、就職する前から仕事内容をあれこれと心配していても、就活で自分の行動にブレーキをかけてしまうだけです。

 彼らはどのように就活を進めていけばいいのでしょうか。また、周囲はどう支援していけばいいのでしょうか。今回は「自分に向いている仕事の探し方」について考えていきます。

就活に対し、
「覚悟」を持って臨んでいるか

「就職」という目標を立てて「自分に向いている仕事を探す」というのは、就活において最も多くの時間を費やす作業といえるでしょう。なぜなら、社会人になってから定年まで勤める期間は40年以上になり、人生の一大事として「就職」の失敗はしたくないからです。

 そこで、活動の第一歩としては「覚悟」を持って期限内に決めることをお勧めします。つまり、学生の場合は、就活スケジュールを見ながら、いつまでにどんな行動を起こすのかを決めること、一方、第二新卒の場合は、いつまでに就職をするのかをはっきりと決めることが、それぞれ重要です。

 冒頭の私の返答は、「覚悟」を持っているかどうかを確認する際に使う最初の一言です。

 就職できない理由の一つが、ご自身の覚悟ができていないために、行動しないのを正当化することです。例えば、インターネット上に公開されている適性検査や適職診断の作業をしている間は、次の段階に進まなくてもいいという気持ちになり、それ以上の行動をしなくなります。

 適性検査や適職診断は提供サービスへの登録が必要であるものの、今やインターネットでも無料で簡単に受けることができます(中には有料で受ける適職診断や遺伝子特性及び傾向判別テスト等もある)。しかし、カギとなるのは、それらの結果が自分にとって良くても悪くても、それをベースにご自身がどう行動するかです。

 この段階における就職支援の対応は、まず本人が覚悟を持ち、期限内に決めることについて本人と約束することです。「何に向いているのか」について家族や周囲と一緒に悩んでいても、時間だけが過ぎていきます。「期限目標を守る」という約束を交わすことができるのは、就職支援者だけです。

「自分に向いている仕事=自分がやりたい仕事」
であるとは限らない

「自分に向いている仕事」に固執しすぎてはいけない理由は他にもあります。例えば、周りから見るとあの人は絵やパソコンが得意で、デザインの仕事が向いていると思うのに、本人は違う仕事がしたいといったケースです。

 つまり、必ずしも「自分に向いている仕事=自分がやりたい仕事」とは言えないのです。適職診断の結果、○○の職業に合うと客観的に判断されたとしても、自分にとって合わないと感じれば、ギャップが生じます。特に大手企業のように、総合職採用となった場合、配属先が分からないことはもちろん、将来、部署異動だけでなく、転勤の可能性もあります。

 ですから、「自分に向いている仕事を探す」にあたって、受け身の姿勢になるのではなく、視野を広げるうえで、「自分の能力をどう活かすか」という発想が必要になります。ここで適性検査や適職診断をした場合には、その結果と照らし合わせてみるのもお勧めです。

 例えば、適職診断で「分析力を活かした職業」という結果が出たとします。この結果を鵜呑みにして、そのまま研究者や分析官の仕事に固執する必要はありません。営業職でも事務職でも生産管理でも、それぞれの仕事の中で、分析の面を活かせないかと考えてみることです。もちろん、実際に社会に出てから工夫を重ねていけばいいので、今の段階で適性検査や適職診断は参考程度にとどめておいたほうがいいでしょう。

「自分に向いている仕事」に
こだわる人の就職支援方法

 では「自分に向いている仕事」にこだわる人の就職支援方法は、どうすればいいのでしょうか。先述した中の支援のポイントは次の3つです。

(1)明確な期限を決める
(2)期限内に決める覚悟を持つ
(3)向いている仕事でも、向いていない仕事でも活躍できるという意識に変える

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 期限内に決めるという覚悟を持つことで、自分から行動を起こせるようになります。その際に「自分に向いている仕事」ではなく、どんな仕事でも自分の能力を活かすという気持ちを持つことが重要です。なぜなら仕事の幅を広げれば、自分の視野が広がっていくからです。

 次に、業界や社会の仕組みを理解するという一般的な就活の話に入ります。この段階になると、最初から諦めていたり遠慮していたりしていた業界や職種にエントリーできる可能性が出てきます。

 実践的なものでは、社会人や職場との接点が持てる機会(インターンシップなど)を増やしていくことをお勧めします。1日体験のインターンシップでもいいのですが、できれば職場を肌で感じたり、何かしらの挑戦ができたりするような環境に飛び込んで、ご自身で「○○の仕事」を実感することです。これにより、就活で行動の幅が広がります。

「向いている仕事、向いていない仕事」という考え方は、昔からある最初の関門です。しかし、周りから「○○の仕事は向いていない」と言われても気にせず、社会人としてのスタートに立っていただきたいと思います。

 どんな仕事も自分がどう関わり、一つひとつの積み重ねと成功体験でご自身が自信を持つこと。これが今後のご自身の仕事に対するやりがいにつながるのではないでしょうか。

(キャリアコンサルタント 櫻井樹吏)