老後のお金クライシス! 深田晶恵
【第54回】 2017年1月11日 深田晶恵

あなたの「手取り年収」、2017年はこうなる!

今年の手取り額は、小幅な減少

 毎年1月に「今年の手取り年収」を年収・属性別に試算をするのが私の恒例行事となっている。今年も試算結果をお届けしよう。

 手取り年収とは、「実際に使えるお金」の金額のこと。各種手当込みの「額面年収」から所得税・住民税、社会保険料を差し引いて求める。「可処分所得」ともいう。

 多くの人は、源泉徴収票を見て自分の「額面年収」は知っている。住宅ローンの申し込みやクレジットカードの申請をする際の書類の「年収」欄は、額面年収を書くのでなじみがあるだろう。これに対し「手取り年収」は、源泉徴収票に書いてあるわけでなく、自分で計算しないとわからないので、ほとんどの人が把握していない。

 手取り計算方法は後述するとして、まずは「今年の手取り年収」の試算結果を次ページの表で見てみよう。

 手取り年収に影響を与える今年の制度改正は、厚生年金保険料率の引き上げ(本人負担分0.059%)と、雇用保険料の引き下げ(本人負担分0.3%)のおもに2点。どちらも小幅な料率改正のため、手取りに与える影響は前年比2000~4000円減とわずかに留まった。

 厚生年金保険料は、2004年の年金制度改正で毎年0.354%(本人負担0.177%、事業主0.177%)ずつ引き上げ、2017年以降は固定されることが決まっている(2017年だけは0.118%の引き上げ)。14年間続いた厚生年金保険料アップは、これで一段落する。

年収1000万円超の人は増税

 一部の人に影響がある制度改正も見ておこう。額面年収1000万円を超える会社員は、サラリーマンのみなし経費である「給与所得控除」が縮小するため、所得税・住民税が増税になる。額面年収1200万円の人で昨年より約3万3000円、1500万円では約4万4000円、税負担が増える。

 高所得者が増税になる改正は、報道で大きく取り上げられることが少ないので「知らなかった」という人も多いと思うが、該当する人はしっかり押さえておきたい。以前は、どんなに年収が多くても給与所得控除に上限は設けられていなかったのが、2013年の税制改正で上限が設置された。給与所得控除縮小による増税スケジュールは以下の通り。

【給与所得控除額の縮小スケジュール】
2013~2015年:年収1500万円超の上限を245万円とする
2016年:年収1200万円超の上限を230万円とする
2017年:年収1000万円超の上限を220万円とする

 年収1200万円の会社員(税務上の扶養家族は妻と高校生の子2人)の場合、2017年の手取り収入は、増税実施前の2012年に比べると約9万円減、年収1500万円は約18万円減ることになる。

 また、大企業の会社員や公務員は、介護保険料が上がる可能性がある。保険料の計算において今年8月より「総報酬制」が導入されるため、健康保険組合や共済組合は料率がアップする公算が大きいからだ。反対に中小企業で働く人は下がる可能性がある。

額面年収が同じでも
15年間で50万円も手取りが減っている!

 年収1000万円以下の人については、この数年、大きな制度改正がなかったため手取り減少は一段落した観があるが、過去を振り返ってみると、税金と社会保険料の負担はじわりじわりと引き上げられている。

 図(3)は、額面年収700万円の2002年からの手取り年収の推移を表すグラフだ。

 横ばいの年があったとしても、増えている年は一度もなく、見事に右肩下がりとなっている。2003年に社会保険料の総報酬制が導入されたことにより、ボーナスからも同じ料率で社会保険料が引かれるようになった。当時「ほとんどのサラリーマンの手取りが減るな」と思い、手取り収入を毎年試算して推移を見ていこうと決め、恒例行事とした。

 その後も「配偶者特別控除の一部廃止」や「子どもの扶養控除の廃止と縮小」などが実施され、そのたびに手取り額は大きく減少している。

 額面年収700万円を例にとると、制度改正がなかった2002年の手取りは約587万円、2017年は約537万円。「使えるお金」は、15年間でなんと50万円も減っているのである。国の財政状況と少子高齢化を考えると、今後も増税や社会保険料の負担増は避けられない。額面年収だけ知っていても現実的なマネープランは立てられないと肝に銘じておこう。

手取り年収計算は2分でできる!

 折しも今月は職場を通じて源泉徴収票を受け取る時期。これを機会に昨年の手取り年収を計算しよう。源泉徴収票は、勤務先があなたの給料から天引き(源泉徴収)した1年分(1~12月)の所得税を、税務署に知らせるための書類である。企業と税務署のやりとりの書類なので、言葉などがわかりにくい。

 さらに今年からはマイナンバーの導入により紙のサイズが2倍になり、記載情報も増えているが、みなさんが知っておくポイントは変わらないのでご安心を。手取り額を計算するには、次の3つの金額だけ拾えばいいのである。

 A「支払金額」…額面年収のこと
 B「源泉徴収税額」…天引きされた所得税額のこと
 C「社会保険料等の金額」…天引きされた本人負担分の厚生年金、健康保険、雇用保険等の保険料。40歳以上は介護保険料もかかる

 手取り収入は、額面年収から「所得税・社会保険料・住民税」を差し引いたものだ。あとひとつ「住民税」が必要だが、源泉徴収票では拾えない。住民税は、毎月の給料から天引きされている額を12倍すると1年分の税額が算出できる。または、5月に職場から配付される「住民税決定通知書」でもわかる。ただし、この書類には「年額の住民税」というわかりやすい記載はない。「特別徴収税額(要は給与から特別に天引きする税額ということ)」の欄に書いてある金額が、1年分の住民税だ。

 4つの数字を拾ったら、下記のシートを使って手取り年収を計算しよう。毎年1月の恒例行事にするといい。

 その他の手取り収入に影響を与える制度改正として、夫が配偶者控除を受けられる「103万円の壁」がなくなり、「150万円の壁」が新たに出現することが決まったが、施行されるのは2018年から。「新配偶者控除」によりパート主婦のいる家庭の世帯手取り収入がどう変化するのかは、本コラムの第52回『新配偶者控除「150万円の壁」で世帯の手取り収入はこう変化する!』で試算したので、そちらも参考にしてほしい。