英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週は大臣の「メリーゴーラウンド」と呼ばれる日本の政界で、またしても閣僚が辞任したというニュースについてです。前原誠司前外相の辞任についてほとんどの英語メディアは「タカ派的でエネルギッシュな前原氏は首相の後継者と期待されていただけに、菅政権にさらなる打撃」と書いています。「ささいな」問題でそんなことになってしまう菅政権は、ひいては日本の政治は、なんて脆いのかと。中には、政治資金規正法の政治利用と「疑わしきは罰する」日本社会の在り方そのものが、日本にとって弊害なのではという指摘もありました。(gooニュース 加藤祐子)

いつまで回るメリーゴーラウンド

 先週は熱風邪と花粉症のダブルパンチでお休みしてしまい、失礼しました。さて今週。前原氏が、子供の頃からお世話になっていた在日韓国人の女性から数十万円の献金を受け取っていたということで、外相を辞任しました。

 英語メディアは何と言っているのか。今年1月の時点で「ここまでか」と少し驚くほど前原氏に期待する論説を載せたのは、米『ワシントン・ポスト』紙でした。当のハイアット論説委員長がどう書くのか興味のあるところですが、日本時間8日午前の時点ではまだ記事は見当たらず。一方で東京特派員のチコ・ハーラン記者は、「donation flap(寄付をめぐる騒ぎ)」という表現の見出し記事で、まず前原氏の「surprise resignation(驚きの辞任)」が「菅直人首相のぐらつく与党に、新たな打撃となった」、「日本が国内で、そして最も近い同盟諸国との間で直面している諸問題を、より深刻にする」と評しています。

 記事は(いつものように敬称略で)「タカ派的な前原はオバマ政権関係者の間で、アジア安全保障の上で両国に共通する利益を代弁する人物と目され、人気があった」と説明。オバマ政権関係者は「内々には、日本政府の連続性のなさに不満をもらしてきた」とも。「指導者がメリーゴーラウンドのように入れ替わるため」普天間基地移設の最終決定がますます遅れているのだと。

 記事はさらに、首相候補とされる前原氏は日本でも有数の「prominent(目立つ、突出した、卓越した)」指導者の1人だが、その大願(aspiration)は「少なくとも少しの間は、横道にそれることとなった」と書いています。

 米『ニューヨーク・タイムズ』紙のマーティン・ファクラー東京特派員は、「若く、タカ派的な」前原氏が「菅首相の後継者だろうと、広く見られていた」と説明します。それにもかかわらずその前原氏が約3000ドル程度の「軽微な違法行為」に見える内容で辞任するのは、「10%台後半にまで支持率が落ち込んだ菅氏の立場が、いかに弱体化しているかの指標となっている」と。さらに、小沢一郎氏と鳩山由紀夫前首相にまつわる政治資金問題も民主党支持率低下の原因なだけに、政治と金の問題の繰り返しを避けるために前原氏は辞任したのではないか、とも推測しています。

 政治と金の問題と言っても、今回問題となったのは20万~25万円の話なのですが……(脱税事件で有罪となった男性が会長を務めていた企業によるパーティー券購入の話もあったのに)。

日本の仕組み自体が日本を飲み込む

 AFP通信もまた、前原氏が菅首相の後継者と見なされていたと書き、「前原氏は外相としてタカ派的できわめて愛国的な姿勢をとっていただけに、このスキャンダルの打撃は大きかった」と評しています。

 英『ガーディアン』紙の社説は、「Resigned to resign」という見出しです。「resign」という言葉の二重の意味を使った言葉遊びなので訳しにくいですが、「辞任しかないと諦める」とでも訳しますか(「resigned to~」は「~はやむを得ない」という意味です)。

 いわく「前原氏の辞任は損失だ。彼には、アメリカとの軍事同盟や、重要さを増す中国との通商関係を舵取りするだけの、ビジョンとエネルギーがあった」、「どんなに将来を期待されていようと、ほかの民主国家なら細かな事務処理上の違反行為として片付けただろうささいな問題で失脚してしまうのが、菅氏の政治的脆さの現れだ。今回の問題は、(訳注・英議会を揺るがした)経費問題とはわけが違う」と、前原氏の辞任を惜しみ、そして日本にも「1年以上は続く総理大臣がいた方がいいのだが。どしどしご応募ください」と痛烈な皮肉で締めくくっています。

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