中国嫌いが災い、AIIBを巡る世界の流れに日本は乗り遅れた

 約2年前のいま頃、中国のアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、日本では熾烈な議論が繰り広げられていた。「日本はそれに加入すべきではない」といった感情的な論調が主流だった。中には中国を罵倒する発言もあちらこちら出ていた。

 当時、私は出演したテレビ番組や執筆している連載コラムなどで、「AIIBに加入する国がもっと増えてくると思う。中国主導かどうかといった問題よりも、国際銀行の設立に関わった経験を持つ先輩役の日本もアジアインフラ投資銀行に参加すべきだ」と力説した。しかし、一蹴される、または一笑されるケースが多かった。日本メディアの一辺倒的な報道姿勢にも目を覆いたくなる場面が多々あった。

 1998年から「日中関係はこれから20年間、よくならない」と予測し、2005年には、「日中友好時代が終わった」との判断を下した人間としては、こうした論調やメディアの姿勢には別に驚きなんかは覚えていない。

 ただ、生活基盤を日本に置いている以上、日本は自らの国益を損なうまでの誤った政治判断をしたら、まずいのではと心配していた。

「冷静に」と言ったら
売国奴と罵倒された筆者

 このような思いに駆られて、2015年4月2日、ダイヤモンド・オンラインのこのコラムで、「日本は中国に対する冷静さを欠き、AIIB加入問題で流れを読み間違えた」と題した文章を発表した。

 文章の中で、私は、中国が主導するAIIBの創立メンバーの募集について、米国に追随し、中国の孤立を予測し期待していた日本は「超甘すぎる観測で世界の流れを読み違え」、「逆に孤立した立場に追い込まれた」と指摘した。

 当時、日本の経済界からも「インフラビジネスが不利になること」を心配する声が上がった。そこで私は「激動する日中関係と世界関係を平心静気に見つめて」いこうと提案した。この「平心静気」は中国のことわざだが、「落ち着いて冷静に」という意味だ。