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中国がアジア各国を“金満外交”で蹂躙する理由

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第439回】 2016年8月2日
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中国の強引な南シナ海進出に対して
アジア各国の姿勢のばらつきが鮮明化

ラオスで開催されたASEAN外相会議の共同声明を見ても、中国への懸念を示したものの、仲裁裁判所の判断を尊重するとの記述は棚上げされた
Photo:外務省HPより

 国際的な裁定が下ったにもかかわらず、今のところ、中国の強引な南シナ海の海洋進出の落としどころが見えない。それに伴い、アジア情勢にも大きな影響が出ている。最も顕著な兆候は、ASEAN(東南アジア諸国連合)の中で対中国の姿勢で溝ができていることだ。

 中国の海洋進出に対する、アジア各国の姿勢のばらつきが鮮明化している。ラオスで開催されたASEAN外相会議の共同声明を見ても、中国への懸念を示したものの、仲裁裁判所の判断を尊重するとの記述は棚上げされた。

 カンボジアなど親中派の国が中国への配慮を求めた結果、一時は共同声明が出せない恐れもあったとみられる。結局、各国は妥協を余儀なくされ、中国の「身勝手」を容認するとも取れる声明に落ち着いた。

 声明の中で明示的な批判がなかったことを受け、中国の王毅外相は「ASEANは中国を支持」と身勝手な見方を示した。あくまでも強気な姿勢を崩さない。。

 中国政府には、国内経済の減速に対する国民の不満を抑え、関心を海外に向けさせるために積極的な海洋進出を進める必要があるのだろう。そこには、中国を中心に世界が動くという"中華思想"に頼って、現在の一党独裁体制を支える理屈を作ろうとする意図が読み取れる。同時に、中国側の焦りも感じられる。

 これらの中国の間違った海外政策で、アジア諸国の対中感情は明らかに悪化している。フィリピン等は自らの主権が侵害されたことを受けて、中国との経済的な関係以上に外交ルートを使った安全保障の強化を重視し始めた。

 そうした中、国際的な司法判断を尊重し“大人の対応”を取ってきたわが国に対して、好意的な姿勢を見せる国は増えている。わが国は東南アジア各国との連携を強め、正しいことを正当に主張すべきだ。それは、最終的にわが国の経済外交の促進にもつながる。

中国の“金満外交”に懐柔された
ラオスやカンボジアなど親中派の国

 7月12日に示された仲裁裁判所の判断に対して、中国政府は真っ向から反発し、国際司法判断の受け入れを断固拒否している。その裏には、経済成長率の低下が顕著な中国国内の問題がある。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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