資源世界大戦が始まった
日高 義樹 著 1400円(税別)

 21世紀の新しい世界戦争が始まった!

 19世紀の歴史家トーマス・カーライルが「世界は技術を持つ工業国家によって形づくられる。いかに膨大な資源を持つ国もそれだけで世界を動かすことは出来ない」と言った。

 20世紀はまさにそのような世紀だった。

 先進国は資源を求めて戦いを続け国際社会を形成した。だが今やカーライルの世界は終わりをつげた。

 人口が増え過ぎた地球上では資源を持つ国々の発言力が急速に強くなり、これまでとはまったく違う新しい世界が出現しつつある。

 この本では、まさに大嵐が吹き始めたような新しい世界についてまず伝えているが、この激動の状態がとどまることなく続くと思われるのは、カーライルが主張した世界の象徴ともいうべき国連が全く意味をなさなくなっていることでも明らかである。

 ところが20世紀後半、アメリカに与えられた環境に安住し経済成長のみに全力を上げて来た日本人とその指導者は、国の外で吹き荒れている嵐にまったく気がついていない。資源をめぐる世界戦争が始まっていることを自覚していない。

 しかも国際社会のなかで比類をみない経済的成功をおさめたことに自己満足し、国際社会の大変化に気をとめようともしなければ、対応しようともしていない。このような「成功のあと自己満足に陥る」という、日本の国民性がきわめて危ういものであることは歴史を見ても明らかである。

 私がこの本を書いたのは、日本の人々が自己満足にひたっている間に世界が全く変わってしまっていること、自らの力によって国家の利益を守らないかぎり日本の存続すら難しくなることに気がついてほしいと願っているからである。

 これまで日本の国防論や憲法改正論は机上のものばかりだった。世界の現実を知り、日本がこれまで金科玉条にしてきた国連主義や平和主義では自らを守ることが出来なくなっていることに気がついて頂ければ幸甚である。

日高義樹
1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。1959年、NHKに入局。外信部、ニューヨーク支局長、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。NHK審議委員を最後に退職後、ハーバード大学客員教授をつとめ、現在はハーバード大学タウブマン・センター諮問委員、ワシントンのハドソン研究所首席研究員として、日米関係の将来に関する調査・研究にあたっている。全米商工会議所会長顧問。テレビ番組「日高義樹のワシントン・リポート」でも活躍中。著書には、『ブッシュのあとの世界』(PHP研究所)、『米中冷戦の始まりを知らない日本人』『アメリカの新国家戦略が日本を襲う』(以上、徳間書店)など多数がある。