前回では、老朽化により徐々にインフラ崩壊の危険が高まっていながら、財政的な制約から対処できないという矛盾を抱えた日本の実態を紹介した。さて、どうすべきか。筆者は、対応策として3階層マネジメント法を考案している。3階層マネジメントでは、まず、地域内の公共施設を受益者の範囲の大小から3つの層に分ける。その層ごとに異なる処方箋で対処する。

第1層=広域化

日本のインフラが危ない(下)<br />広域化、多様化、ソフト化<br />対応策は「3階層マネジメント法」<br />――東洋大学経済学部教授 根本祐二ねもと ゆうじ/1954年鹿児島生。東京大学経済学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。2006年東洋大学に日本初の公民連携(PPP) 専門の大学院開設を機に、同大経済学部教授に就任。現在同大学PPP研究センター長を兼務。専門は公民連携・地域再生。主要著書として『朽ちるインフラ』(日本経済新聞出版社)、『地域再生に金融を活かす』(学芸出版社)など。内閣府PFI推進委員会委員、国土審議会委員、自治体公共施設マネージメント委員会委員他兼職多数。

 第1層は庁舎、公立病院、中央図書館、文化ホールなど自治体全域に便益を及ぼす施設である(次ページ図参照)。

 この層の施設は近隣自治体で持ち合うことにする。キーワードは広域化だ。他地域にあるものと同じような施設を自分の地域にもほしいと考えるのではなく、同じような施設であればお「互いに使い合う」という発想に変える。ワンセット主義を捨てるのだ。人口数万人程度の市が4つ集まって、中央図書館、市民ホール、博物館、大型体育施設の4施設を分担すれば、一市の負担は4分の1になる。

 また、どの地域にも必要な唯一の広域施設である庁舎は、徹底的に面積を削減する。一般的な庁舎の職員一人あたりの延べ床面積は、標準的な民間オフィスより大きいことは意外に知られていない。会議室・応接スペースの一元化、執務スペースのフリーアドレス化(オフィスに固定席を設けないやり方)、書類倉庫の別建物での管理など、民間で一般化している工夫を取り込めば、2~3割の削減は可能である。