先週閉幕した第180回通常国会において、「税と社会保障一体改革」関連法案が成立した。生活保護制度に関しては、削減の方向での見直しが行われる方針となっている。

今回は、民主党に所属しているが民主党案に反対した衆議院議員と政策秘書に、現状をどう認識しているかと対案をインタビューした。立法の場で苦戦する立場からの声を紹介しつつ、生活保護費「削減」が本当に社会保障費の「削減」になるのかどうか、どう対策すればよいのか、腰を据えて考えてみたい。

稼働年齢層の生活保護受給は
就労指導を強化しても解決しない

初鹿明博(はつしか あきひろ)/昭和44年、東京都江戸川区生まれ。都立両国高校、東大法学部を卒業し、衆議院議員逢沢一郎秘書、鳩山由紀夫秘書を経て、東京都議会議員選挙に32歳で初当選。2期目終盤の平成21年、40歳で衆議院議員選挙に民主党公認で出馬し当選。現在、党厚生労働部門 障がい者ワーキングチーム事務局長、生活保護ワーキングチーム事務局長、社会的包摂プロジェクトチーム事務局長代理などを兼務しながら、福祉問題を中心に活動中。
Photo by Yoshiko Miwa

「今回成立した社会保障制度改革推進法のように、安易に社会保障給付を抑制すると、結果として給付増大につながるんじゃないかと思います」

 こう語るのは、民主党所属の衆議院議員、初鹿明博氏だ。一体、どのように給付が増大するのだろうか?

「稼働年齢層への就労指導を厳しくして、働かない人の生保は打ち切るとしますよね。それで、仕事が見つかるとは限りません」(初鹿氏)

 本人が、仕事を選び過ぎなければ済む問題ではないのだろうか?

「仕事を『選んでる』わけではなくて、実際には『選ばれない』人が多いんです。まず、生活保護受給者は、十分な社会的スキルを持っていなかったり、十分な教育を受けていなかったりします。『仕事しろ』と言っても、簡単に仕事に就けるわけがないんです」(初鹿氏)

田村宏(たむら ひろし)/大学卒業後、神奈川県内福祉事務所2か所で、ケースワーカー職10年以上従事。並行して、研修所や専門学校の講師を兼任。その後公務員を辞し、慶應大学SFC研究所上席所員。介護保険による介護事業所を経営し、ケアマネジャー・介護福祉士・社会福祉士としても福祉現場に携わった。現在は大学で教鞭をとる一方、衆議院議員・初鹿明博の政策秘書として福祉政策に関わる。Photo by Yoshiko Miwa

 横から、政策秘書の田村宏氏(社会福祉士)が補足する。

「40代になると、好んで就く人が少ない種類の仕事でも、就労は難しくなりますね。就労支援員の指導を受けても難しいです。そもそも、そういう仕事の雇用の場が東南アジアや中国にシフトしています。国内では、外国人労働者との競合になります。障害者に対する福祉的就労のようなものが、稼働年齢層の健常者にもあれば、話は別ですが」(田村氏)

 障害者に福祉的就労の場を設けることは、一般的に少なからぬコストを必要とする。就労困難な健常者に対して就労の機会を敢えて設ければ、同様の問題が拡大し、結局、社会保障費は増大しそうだ。