先週閉幕した第180回通常国会において、「税と社会保障一体改革」関連法案が成立した。生活保護制度に関しては、削減の方向での見直しが行われる方針となっている。
今回は、民主党に所属しているが民主党案に反対した衆議院議員と政策秘書に、現状をどう認識しているかと対案をインタビューした。立法の場で苦戦する立場からの声を紹介しつつ、生活保護費「削減」が本当に社会保障費の「削減」になるのかどうか、どう対策すればよいのか、腰を据えて考えてみたい。
稼働年齢層の生活保護受給は
就労指導を強化しても解決しない
Photo by Yoshiko Miwa
「今回成立した社会保障制度改革推進法のように、安易に社会保障給付を抑制すると、結果として給付増大につながるんじゃないかと思います」
こう語るのは、民主党所属の衆議院議員、初鹿明博氏だ。一体、どのように給付が増大するのだろうか?
「稼働年齢層への就労指導を厳しくして、働かない人の生保は打ち切るとしますよね。それで、仕事が見つかるとは限りません」(初鹿氏)
本人が、仕事を選び過ぎなければ済む問題ではないのだろうか?
「仕事を『選んでる』わけではなくて、実際には『選ばれない』人が多いんです。まず、生活保護受給者は、十分な社会的スキルを持っていなかったり、十分な教育を受けていなかったりします。『仕事しろ』と言っても、簡単に仕事に就けるわけがないんです」(初鹿氏)
横から、政策秘書の田村宏氏(社会福祉士)が補足する。
「40代になると、好んで就く人が少ない種類の仕事でも、就労は難しくなりますね。就労支援員の指導を受けても難しいです。そもそも、そういう仕事の雇用の場が東南アジアや中国にシフトしています。国内では、外国人労働者との競合になります。障害者に対する福祉的就労のようなものが、稼働年齢層の健常者にもあれば、話は別ですが」(田村氏)
障害者に福祉的就労の場を設けることは、一般的に少なからぬコストを必要とする。就労困難な健常者に対して就労の機会を敢えて設ければ、同様の問題が拡大し、結局、社会保障費は増大しそうだ。