上海では今、日本人が集まれば「今後どうする?」の話題で持ちきりだ。相互に情報収集に余念がない。

 10月半ば、上海で日系企業が組織するある定例部会があったが、異例の高出席率を記録した。言うまでもなく、最大の関心事は「今後の身の振り方をどうするか」の決断だ。少しでも多くの情報を掴もうと、多忙な駐在員らが馳せ参じた。

 日本総領事館員による中国の新政権についての解説が終わると、質問が続いた。

「習近平政権は反日強硬派になるとも聞くが、今後の日中関係への影響は?」

「尖閣諸島を国有化すれば日中間がどういうことになるか、シミュレーションぐらいはできていたはずだと思うが、そもそも国有化は何か別の目的があってやったことなのか?」――。

 苦境に立たされた日系企業経営者の、やり場のない感情が見て取れる発言が相次いだ。

 中国がWTOに加盟した2001年以降、日本の企業が堰を切ったように、ここ上海に押し寄せた。上海市に進出している日系企業数は8000社を超えるというが、今回の暴動を機に事業縮小もしくは撤退、という日系企業も出始めている。

 部品加工メーカーのX社もそのうちのひとつだ。日本人経営者Aさんは「工場を閉めることも本気で考えている」と語る。

 中小企業の同社は、7年前に上海に進出した。事業も軌道に乗ったここ数年は毎年50%増の売上高の成長が見られるようになった。ようやく累損を解消し「さあこれから」という矢先に、「尖閣国有化」で出端を挫かれた。「石原都知事は一体、何を考えているのだ…」という恨み節も出る。

 他方、「反日デモはひとつのきっかけを作ったに過ぎない」というコメントもある。