遅れて始まった
東アジアの地域貿易協定

 いまや、世界のどこに行っても、地域貿易協定の交渉が行われている。自由貿易協定、経済連携協定、関税同盟など、いろいろな名称が使われており、それぞれに少しずつ違いもあるが、特定の国や地域で域内の貿易自由化を進めようとすることを、一般的に地域貿易協定と呼ぶ。日本が進めている経済連携協定も韓国などが進めている自由貿易協定も、すべてのこのなかに入ると考えてほしい。

 日本が最初の経済連携協定を結んだ相手はシンガポールであり、それが実現したのは2001年であった。当時、世界でGDPという指標で見て規模の大きい順に30ヵ国を並べると、いかなる地域貿易協定にも参加していない国はそのうち4つしかなかった。日本、中国、韓国、台湾である。それ以外の上位30ヵ国はすべて何らかの地域貿易協定に参加していたのだ。

 東アジアにおける地域貿易協定の動きは、世界の潮流から遅れていた。しかしそれから10年ほどの間に状況は大きく様変わりした。日本も韓国も中国も地域貿易協定に積極的に取り組む姿勢を強め、どのような地域貿易協定が形成されていくのかが、この地域の将来を見る上でも重要な要素となりつつある。

通商政策は4つのレベルで
同時並行的に展開する

 第二次世界大戦後の世界の貿易ルールは、GATT(関税と貿易に関する一般協定)、WTO(世界貿易機関)を中心に展開していった。ジュネーブに本拠を置くWTOやその前身であるGATTは、多くの加盟国の間の通商ルールを縛る多国間(マルチ)の取り決めである。特定の国の間や地域で貿易自由化を進めていく地域貿易協定とはその性格を大きく異にする。