2010年以降の金融市場における最大の懸案であった欧州債務問題については、今年、ECB(欧州中央銀行)の大きな決断によって、光明が見え始めた。ECBは、7月に銀行がECBに預ける預金ファシリティ金利を0%まで引き下げるゼロ金利政策に踏み切った後、9月には救済申請を条件に当該国の国債を無制限に買い入れる新たな国債買い入れプログラム(OMTs)を発表した。

 ゼロ金利政策はユーロ圏の政府や金融機関の資金調達コストを引き下げ、OMTsはスペインなどの長期国債利回りの大幅な低下を促した。ユーロ圏の株式市場は大幅に上昇するなどリスクオンの状態が続いている。

 一方、ユーロ圏の2年スワップ金利の変動率を表すスワップションのボラティリティは低位で安定を続けている。これは欧州債務問題の解決への道筋が見えても、ユーロ圏の短期金利が容易に上がらないであろうことを示唆している。

 このような状況は、OMTsが持つもう一つの側面によるところが大きいと考えられる。OMTsはスペインなどの国債をECBが「無制限」に買い入れる政策ではあるものの、「無条件」ではない。