11月14日に中国共産党の第18回党大会が終わり、翌15日には習近平氏が、党総書記に選出された。02年から続いた胡錦涛(総書記・国家主席)・温家宝(総理)体制を引き継ぎ、習近平・李克強新体制がスタートする。東京大学大学院政治研究科の高原明生教授に、大国の自信と国内の不安定化の双方が増すいまの中国にあって、新政権はどのような性格を持ち、いかなる課題を抱え、対外政策はどう変わるのかについて聞いた。(ダイヤモンド・オンライン編集長 原 英次郎)
習新政権は安定した
権力基盤を築けるか
東京大学大学院法学政治学研究科教授。1981年東京大学法学部卒、サセックス大学にて修士号および博士号取得。在香港日本国総領事館専門調査員、桜美林大学助教授、立教大学教授等を経て2005年より現職。在中国日本大使館専門調査員、英国開発問題研究所理事、ハーバード大学客員教授、アジア政経学会理事長などを歴任。現在、新日中友好21世紀委員会委員(日本側秘書長)、東京財団上席研究員などを兼任。主な著書にThe Politics of Wage Policy in Post-Revolutionary China (Macmillan, London and Basingstoke, 1992)、『日中関係史1972―2012 I 政治』(共編、東京大学出版会、2012年)など。
――習近平新政権が、正式に発足しました。まず、何に一番注目しておられますか。
私が注目しているのは、どれだけ習近平政権が安定するのか、そのためにどのような人事配置ができるかということです。
例えばその一つが、人民解放軍のトップである党中央軍事委員会主席のポジションを譲られるかどうかでした。それに習近平さんの呼称ですね。実は2代前の江沢民元総書記までは、中央指導部の「中核」という呼称を用いて呼んでいた。
これは鄧小平さんが1989年の天安門事件の後に反省をして、党総書記と軍事委員会主席を別の人がやるのはよくないというので、それを統一すると同時に、中央指導部の中核が、だれであるかはっきりさせるために、江沢民さんを抜擢するわけです。その際「江沢民が第三世代中央指導部の中核だからな」と言い渡すわけですね。「第一世代は毛沢東。第二世代は自分、第三世代は江沢民である」と。「だからみんな言うこと聞け」、「団結しろ」というわけです。
ところが、江沢民氏はその遺訓に従わず、胡錦涛前総書記を中央指導部の中核と呼ばせてあげない。そのためもあり、胡錦涛時代にはずっと権力闘争が続いて、胡錦涛氏の権力基盤が安定しませんでした。例えば、胡錦涛さんの方に、権力がぐっと寄ったときには、対日政策上は日本に友好的になる。このように、他の政策も含めて、政権が安定するということは、中国にとって非常に重要です。そこが私が一番注目している点です。