規制緩和と聞けば、先進的な分野への民間の事業参入を可能にするなど、良い面ばかりを思い浮かべがちである。だが、世の中には、既得権益を守るための「悪い規制緩和」も存在する。
現在、金融審議会で議論が進んでいる銀行の出資規制緩和がその典型だ。銀行主導の日本独特のコーポレートガバナンス、株式の持ち合いによる緊張感のない経営へのノスタルジーが、時として亡霊のように現れ、日本の資本市場を破壊している。これは、連載第18回で触れたように、経団連が社外取締役の義務化など、世界標準のコーポレートガナバンスの整備に強硬に反対するのと表裏一体の関係にある。
銀行はなぜ出資が
規制されているのか
銀行の出資規制は、独占禁止法と銀行法に定めがある。独占禁止法(銀行による国内の会社の5%を超す議決権保有を禁止)は、事業支配力の過度の集中による優越的地位の乱用を防止することに主眼が置かれ、銀行法(銀行が国内の一般事業会社の5%を超す議決権保有を禁止、銀行持株会社とその子会社の合算で15%を超す議決権保有を禁止)は、銀行が本業以外の事業により健全性を損なうことがないようにすることに主眼が置かれている。
考えてみれば、これらの規制は、現在の世界情勢に鑑み、まずます重要性を増していると言えよう。すなわち、グローバル化する世界の中で、コーポレートガバナンスのあり方もOECD原則などに基づき標準化されつつあり、日本企業がグローバルに戦わなければならない中、日本独特のガバナンス慣行は、早急に改善されなければならない時期にある。
また、連載第3回で触れたように、リーマンショックの反省を踏まえて、銀行持ち株会社の肥大化と業務多角化による収益の変動に歯止めをかけるべく、米国におけるドット・フランク法の制定をはじめ、世界的に銀行の業務範囲や投資を規制強化する方向にある。