2007年10月、貯金1000ドルとわずかな荷物だけを持って、サンフランシスコの友人ジョーの部屋に転がりこんだブライアン・チェスキーは、自分の貯金額では、この街では満足に家賃も支払えないことを知った。ちょうどその週末に開催される国際会議で街中のホテルは満室。そこで、部屋の空きスペースにエアーベッドを置いて、急ごしらえのB&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)を提供することで、家賃代を稼ぐことを思いつく。それは首尾よく3人のゲストを得た。これが、既存のホテル業界を破壊すると世界中で注目されるウェブサービス、Airbnb(エアービーエヌビー)の始まりとなる。わずか5年前の出来事だ。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 魚谷武志)

サービスのスケールアップはたやすい
人に愛されるプロダクトの追求が難しい

――最初のルームシェアから、現在のソーシャルテクノロジーを使って個人間のマーケットプレースをグローバルに展開するビジネスへと、どうつながっていくのですか。

Brian Chesky
Airbnb CEO/共同創立者。ロードアイランドデザインスクールで工業デザインを専攻。ロサンゼルスで工業デザインショップを経営後、2008年8月、サンフランシスコでジョー・ゲビア、ネイサン・ブレカージクとともにAirbnbを創業。2010年6月から自らAirbnbコミュニティの物件で暮らし、顧客の視点を経営に活かしている。
空き部屋を宿泊施設として貸し出せるオンラインのマーケットプレースAirbnbのホームページ。2012年現在で192ヵ国3万以上の都市に23万件以上の登録物件、1000万件以上の予約実績がある

 最初はカンファレンス向けにゲストに提供できる空きスペースの情報を仲介するウェブサイトでした。3人目の共同創立者のネイサン(・ブレカージク)が加わってから、3人で考えたのが、だれかの家をまるでホテルを予約するようにウェブサイトから予約できたらどうだろうという話になり、改めて2008年6月にウェブサイトを立ち上げました。以来、現在にいたるまでそこに技術的に改善を加えてきました。

――トラフィックの急増など、これまで多くの技術的な壁を乗り越えてきたのでしょうが、どういうことがありましたか。

 最初は1台のサーバーから始めましたが、どんどんサーバーを追加しなければならなくなり、わりと早い段階でアマゾン・ウェブ・サービスを使って運用するようにしました。スケールの拡大はCTO(最高技術責任者)のネイサンに任せていて、ワールドクラスのエンジニアからなるチームを組んで対応しています。しかし、スケールの拡大は大して難しいことではありませんでした。

――では、何が大変でしたか。

 多くの点でAirbnbはアートとテクノロジーが融合したものです。世界中でこのサービスがうまくいくにはどうしたらいいのか、その探求こそ重要な課題です。人に愛されるプロダクトはどんなものか、世界中でうまく機能する決済システムとは。いろんな文化を持つ世界中の人々が素晴らしい経験が持てるウェブサイトはどんなものなのか。我々の顧客に対し優れたサポートをするにはどうすればいいか。モバイルデバイスですぐにアクセスできるシンプルなウェブサイトはどうあるべきか。