デフレ脱却を急ぐために、日銀は2年以内に2%の消費者物価上昇を目指すという。2%の消費者物価上昇率を達成すれば、デフレを脱却できるのだろうか。
注意したいのは、多くの人が景気を良くして物価の下落を止めるということを指して、「デフレ脱却」と言っていることだ。単に経済指標としての消費者物価を上げることを望んでいるのではない。
単に消費者物価を上げるのならば、消費税率を引き上げればよい。消費税は、事業者が販売価格に税率をかけた金額から、仕入代金に消費税をかけた金額を控除して納税する。3%分は事業者のものにならない。
付加価値の中から抜き取られた税額の部分は、事業者から政府へと所得移転されるだけだ。最終的に税金を負担するのは消費者だ。だから、消費税増税は、消費者物価を上げることになっても歓迎されない。
一方、金融緩和を通じたデフレ脱却は、マネーを増やすことによって起きるという説明になっている。純粋な貨幣数量説に基づくと、貨幣流通量を増やせば、物価の水準自体が書き換えられて、デフレが解消されることになっている。
貨幣流通量が10%増えれば、物価も10%上昇するという論法だ。ということは、尺度としての貨幣が増加した結果、物価が上がっても、正味の生産性は変化しないということになる。つまり、実質成長率は不変(中立的)という意味である。
3%の消費税率の引き上げでも、2%の消費者物価上昇でも、実体経済を良くする効果がないのに、なぜ大胆な金融緩和が推進されようとしているのだろうか。筆者は、インフレに隠れた思惑があると見る。
実際は、貨幣数量説の説明とは異なって、マネーを増やすと経済成長率には中立的ではない刺激効果が表れるから、実体経済に与える影響に期待する人が増えるのだと考える。