トランプ関税と雇用悪化を背景にFOMC理事2人が「変節」した理由、9月に利下げ再開の公算大Photo:AFP=JIJI

米FOMC(連邦公開市場委員会)は、7月の会合で政策金利を据え置いたものの、ボウマン副議長とウォラー理事が利下げを主張して反対票を投じた。もともとタカ派だった彼らの“変節”は、雇用悪化とトランプ関税による物価上昇が一時的との認識を背景にしている。FOMCの分断は解消しそうにないが、8月1日に発表された雇用統計の大幅下方修正もあり、9月の利下げ再開の可能性が高まっている。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

FOMCで異例の反対票
ボウマン副議長とウォラー理事の“変節”

 米国社会の分断が取り上げられて久しいが、FOMC(米連邦公開市場委員会)の内部でも分断が生じつつあるようだ。雇用の悪化を示した、8月1日発表の雇用統計発表後も分断はすぐには解消しそうにない。

 7月31日に開催されたFOMCは、政策金利であるFFレートの誘導目標を5会合連続で4.25~4.50%に据え置くことを決定した。

 パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、米国経済の伸びが緩やかになったとしながらも「労働市場はなお堅調」との認識を示した。トランプ関税による物価上昇圧力は一時的である可能性もあるが、長期的な物価上昇につながることを懸念しての据え置きの決定だった。

 そこで32年ぶりの異例の事態が起きた。ボウマンFRB副議長とウォラー同理事が0.25%の利下げを主張して反対したのだ。

 景気や雇用を重視し利下げに前向きなハト派の理事が反対票を投じたのなら、それほど驚くべきことではない。しかし、実は2人とも物価抑制を重視し、利下げに慎重なタカ派とみられていた人物だ。

 次ページでは、2人の理事のスタンスの変化を検証するとともに、今後のFOMCの分断の行方、金融政策の動向を分析する。