本コラムでは、日銀の金融政策について、白川日銀から黒田日銀への「白から黒へのオセロゲーム」が行われたことを書いた(第64回第65回)。

 そこでキモはデフレ予想からインフレ予想への転換と書いている。これを4月26日に公表された「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で確認してみよう。この展望レポートは黒田日銀がはじめて出したもので、旧白川日銀が昨年10月30日に公表したものと比較してみると、その違いが明らかにわかる。

前回レポートとの際立った違い

 まず、分量が少なくなった。旧体制の2012年10月のものと比べると、基本的見解で19ページから8ページ、背景説明を含む全文で126ページから77ページになっている。といっても、内容が薄くなったわけではない。どちらかといえば、旧体制ではどうでもいい資料が多くあったモノを省いて、重要なモノを加えている。

 例えば、海外のマネタリーベース対GDP比が、白川日銀では掲載されていたが、これは省かれている。この数字は、GDP比の水準で見れば日本が高いというので、日本が金融緩和している証左と日銀関係者が主張してきたものだが、水準の高低は現金社会かどうかを意味するだけで、その変化を見なければいけない。その意味で展望レポートの資料は、ミスリーディングであった。

 【基本的見解】という文章でも、新体制と旧体制では変化がある。旧体制では、「国際金融資本市場と海外経済の動向」、「わが国の金融環境」との項目で、ダラダラと現状の記述が続いていたが、新体制ではばっさりと削っている。そして、「わが国の経済・物価の中心的な見通し」と核心部分からスタートしている。このため、前置きなしで日銀の意図がはっきり表れている。

 特に際立った違いは、中長期的な予想物価上昇率である。新体制では「足もと上昇を示唆する指標がみられる。先行きも、「量的・質的金融緩和」のもとで上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる」とされている。