5月31日に開催されたOPEC(石油輸出国機構)の第163回総会では、生産目標の据え置きが決定された。これを受けて原油先物価格は下落した。据え置き決定は、「ほぼ」予想通りであったが、OPEC内での意見の対立が原油価格の下落につながった。

 1バレル当たり100ドル前後の原油価格は、消費国・産油国の双方に受け入れやすい水準とされるものの、OPECの中で、高価格を志向する強硬派と、需要の安定を志向する穏健派とでは、立場がやや異なっている。

 例えば、総会前にイランは生産目標削減を求めると表明していた。4月に北海ブレント原油が100ドルを下回って下落した際には、ベネズエラやアルジェリアも原油価格押し上げを志向する発言をしていた。こうした状況は、2011年夏場にイラン、ベネズエラ、アルジェリアなど強硬派の意見が過半数を制したときと似ていた。

 しかし、今回は、5月に入って、国際指標とされるブレント原油が100ドル台を回復する中で、生産目標の据え置きでまとまったようである。

 原油先物市場では、増産を想定する市場参加者はほぼ皆無だったと思われるが、強硬派の意見表明が事前に目を引いたために、減産が決定される可能性があると想定した市場参加者はいたと考えられる。そのために、生産目標の据え置き決定は原油価格の下落材料になった。

 OPECとしても、この決定がある程度原油相場を押し下げることは、想定の範囲内だったと思われる。OPECは原油市場の情勢に応じて、随時生産量を変更するとしているが、12月4日の総会までに生産目標が変更される可能性は小さいだろう。