6/3(火)に厚労省が5年に一度行なう年金の財政検証の結果が公表されました。既に新聞などで報道されているように、当然その内容には問題も多いのですが、それと同時に、厚労省の官僚が婉曲的にせよ年金の危機的な状況を認めたということは、それはそれで評価すべきではないでしょうか。
経済頼み、女性頼みだけじゃない
財政検証の問題点
前回の年金の財政検証は2009年に発表されましたが、年金基金の運用利回りなど実現不可能な前提の下でシミュレーションを行なっており、2004年に政府が策定した「年金100年安心プラン」は大丈夫と強弁しているだけと各方面から非難を受けました。
それと比べると、今回の財政検証は経済成長率、運用利回り、賃金上昇率などの変数を変えることで、楽観的ケースから悲観的ケースまで8通りのケースでのシミュレーションの結果を示しており、まずこの点については評価できるのではないかと思います。
もちろん、多くのケースで運用利回りは4%以上、そして賃金上昇率は3%以上などの楽観的過ぎる前提となっており、この点については前回同様に問題と言わざるを得ません。
かつ、それ以上に問題なのは、検証全体のトーンが、日本経済がちゃんと成長してくれれば、運用利回りが高まれば、物価や賃金がちゃんと上昇すれば、そして働く女性の割合が増えれば(多くのケースで20歳代後半から50歳代前半までの女性の8割以上が働くという前提)年金制度はなんとか持つんだという、経済頼み、他人任せな感じになっていることです。
しかし、そもそも日本の公的年金制度には、負担より給付の方が圧倒的に多いという構造的な問題があります。その原因は、世界最速で少子高齢化が進んでいるにも拘らず、賦課方式(現役世代が支払う保険料で高齢者が受け取る年金を賄う財政方式)を続けていることに他なりません。
1970年は現役世代10人で1人の高齢者を支えていたのが、2000年には4人で1人を、そして2007年には3人で1人を支える形になり、2022年には2人の現役世代で1人の高齢者を支えることになるのですから、賦課方式という構造問題を解決しない限り、年金財政を本当の意味で安定させることは困難なのです。
その構造問題を置き去りにして、経済が良くなれば…というトーンが強くなっていては、厚労省は無責任と批判されてもしょうがないのではないでしょうか。