売上高は最大手の半分だが利益では凌駕
「和製アップル」、その名はコマツ

 コマツ(小松製作所)は、ショベルカーやダンプカーなどを製造・販売する建設・重機械メーカーだ。製造業関係者の方々には説明すら必要ない有名企業だが、読者の中には「名前は知っているが、詳細は知らない」という人が多いのではないか。

 創業者は、元内閣総理大臣である吉田茂の実兄、竹内明太郎氏。石川県小松市で産声を上げ、そのまま社名にしている。元ニューヨークヤンキースの松井秀喜選手の父親がコマツで働いていた縁もあり、松井選手がCMに出演していたこともある。

 地域社会や取引先を大切にすることでも有名で、サプライヤーで形成される「みどり会」は国内で参加企業数が150を超え、アメリカ、中国にまでネットワークが広がっている。また、工場跡地を活用した地域社会向け施設の建設やイベントを開催するなど、小松市民自慢の企業だ。

 業績もすこぶる堅調。アメリカに拠点を置く建機業界最大手のキャタピラーに次ぐ、第2位の優良企業だ。

 コマツの強さは収益力だ。売上で比較すると、巨人キャタピラーの約5兆円に対してコマツは約2兆円と半分以下だ。しかし利益率では、年度差はあるがキャタピラーを凌駕している。

 一般的に、製造業においては規模の論理が働くので、これほど売上規模に開きがあれば収益力にも大きな差が出る。コマツは、それをダントツのモノづくり力と商品力、そしてビジネスモデル力でカバーしている。

 昨今、世界中で規模を争う戦いが始まっている。先頃、日本が誇る三菱重工業がフランスのアルストムの買収合戦に、シーメンスとタッグを組んで参戦した。結果はGEに軍配が上がった。年商3兆円を超える三菱重工が、世界市場で行われる業界再編の「規模の戦い」に乗り遅れ、さも「負け組」かのような報道がなされている。

 筆者は、知恵や技術で確かなモノづくりを行ってきた日本企業にとって、規模というベクトルだけで戦うことは、決してあるべき姿とは思えない。「規模では負けても事業に勝つ」ことはできるはずだ。