東京証券取引所が本腰を入れる“プロ向け市場”に暗雲が立ち込めている。

 プロ向け市場とは、上場基準を緩和する一方、投資家をプロに限定することで長期保有を促す新興市場。東証はロンドン証券取引所と合弁で新たな取引所を設立、2009年2月にも営業を開始する予定だ。

 この新市場は、成功しているといわれるロンドン証取の新興市場「AIM」をモデルとしており、取引所がいっさい上場審査を行なわない。代わりに、新取引所の指定アドバイザーとなる証券会社などが、審査から上場後の経営についても助言することになる。

 ところが、東証が指定アドバイザーを打診したという証券会社数社が軒並み「うまくいくわけがない」(証券会社幹部)と、あまり乗り気ではないのだ。

 というのも、上場維持に関する業務については証券会社には経験がなく、新たに担当課の設置が必要となる。また、そもそも経験のある人材の確保も容易でない。

 こうしたコストに対し、得られる手数料もほんのわずかになる可能性が高い。

 たとえばAIMの場合、上場維持業務に対する手数料は1社当たり年間1200万円程度にすぎず、これでは追加資金調達がない限り、上場審査の際の赤字を取り戻せないという。

 加えて、企業に不祥事でもあればすべての責任を追及される可能性もあり、「儲けに見合わずリスクが大き過ぎる」(証券会社幹部)と、どの証券会社も不満だらけで及び腰。あわてた東証はここにきて、オンライン証券や中小証券にも声をかけ始めた。

 関係者によれば、「大手証券会社が、持ち株会社制に移行するサントリーの上場を検討中」との話も浮上しているが、まだ一部の話だ。新興市場を活性化させたい証券業界が、協力してこれらの問題をクリアしなければ、真の成功はおぼつかない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 池田光史)