この11月9日はベルリンの壁崩壊から25周年、来年10月3日はドイツ再統一から25周年となる。当時のドイツは熱狂に包まれたが、四半世紀を経た現在は複雑な情勢に立たされている。

 10月10日のG20では、ドイツに景気刺激策としての財政支出の拡大を求める声が相次いだ。その数日前に、IMF(国際通貨基金)はユーロ圏の「今後1年の景気後退確率」を4月予測時の21%から38%へと大幅に引き上げていた(日本は前回の18%から今回は24%に上昇)。明らかに財政支出拡大を促すためのドイツ包囲網が敷かれている。

 しかし、ショイブレ独財務相は馬耳東風の様子だ。大きな痛みを伴ったシュレーダー改革や財政再建を進めてきたからこそ、人々の将来不安が低下し、ドイツは成長を実現できたと信じているからだ。彼はユーロ支持派だが、南欧の改革はまだ甘いと思っている。ドイツは「小切手を切るべきではない」と彼はワシントンで反論した。

 ショイブレは、2015年度予算を「黒いゼロ」にしたがっている。若干黒字の均衡財政のことだ。財政黒字になれば、1969年以来の快挙だ。旧西ドイツの人々にも大きな負担を強いた統一から四半世紀の年に黒字になることは感慨深いだろう。

 しかし、8月の輸出など、ドイツの経済指標は大幅な悪化を示している。「このようなときにドイツ政府は何を言っているのか?」と怪しむ人は多いと思われる。

 ドイツの輸出に関しては、季節調整の問題があるため、実は実態を見ると表面の数値ほどは悪くない。7月の輸出は貿易黒字が過去最高を記録するほど好調だったので、7~8月をならせば、前年比はプラスだ。ただし、伸びが鈍化しているのは事実である。