まったくのオリジナル作品ながらも興行収入20億円を超えるヒット作となった『舞妓Haaaan!!!』(07)。脚本を、希代のヒットメーカー・宮藤官九郎が手がけ、名脇役としてひっぱりだこの個性派俳優・阿部サダヲが長編映画初主演、「笑い」にこだわる水田伸生が監督をつとめた、奇想天外な傑作エンターテインメントだ。──あれから2年。宮藤・阿部・水田の3人が再結集して完成させた『なくもんか』が、11月14日から全国公開される。

阿部サダヲ
あべ・さだを
1970年生まれ、千葉県出身。92年より「大人計画」に参加。07年『舞妓Haaaan!!!』で映画初主演、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。主な出演作は『木更津キャッツアイ』シリーズ、『パコと魔法の絵本』(08)『ぼくとママの黄色い自転車』(09)など。

『舞妓~』の続編は撮りたくなかったという監督が、今回掲げたテーマは"家族"。実はこれは、宮藤にとっては初挑戦となるテーマでもある。人情味あふれる商店街を舞台に、幼くして親に捨てられた主人公が、生き別れの弟と再会し、新たな絆を育んでいく様子を綴った、笑いあり涙ありの作品だ。ハムカツが名物の人気総菜店「デリカの山ちゃん」を切り盛りする主人公・祐太を阿部が、その弟で、ちょっとスカした人気お笑い芸人・祐介を瑛太が、主人公と結婚する元超デブ・徹子を竹内結子が演じている。

 驚くほどにお人好しの主人公を、絶妙な演技で演じた阿部に話を聞いた。

──『舞妓~』公開の直後から今回の企画が動き始めていたそうですが、初めて台本を読んだときの感想は?

阿部サダヲ

阿部:『舞妓~』チームでやるとは聞いていたのですが、台本を読んで、前回とはまったく違うな、と。宮藤さんが書くものはいつも面白いのですが、今回は、いつもとは違う面白さを感じました。

 それから、祐太役を演じるのは、すごく難しそうだなとも思いましたね。

──監督によると、前作はテンションを上げるように演出し、今回は抑えたということですが。

阿部:そうですね。今回はテンションが高くなってしまうところを、監督に抑えてもらいました。ただ、『なくもんか』というタイトルだから、あまり泣いちゃいけないのかと思っていたら、監督が「ウォンウォン泣いちゃいましょう」って(笑)。でも、締めるところは完全に締める、前回よりも振り幅が大きい役でした。