今年最大の政治ショーである「洞爺湖サミット」が9日に閉幕し、G8(主要8ヵ国)サミットは「第3次オイルショック」「食糧危機」「米プライム・ローン危機」「新興国の成長神話の崩壊」と、連鎖的に増幅する世界的な経済危機に対してまったく無力であることを露呈した。

 いったい、この体たらくの背景には何があったのだろうか。もちろん、その主犯として、サミットの議長をつとめた、我らが福田康夫首相の指導力を問う声は少なくない。しかし、サミットと言えば、外務省をはじめ多くの番頭役が揃っている。諸外国だって黙っていないだろう。首相の無能が原因で、ここまで深刻な経済危機を前に、その問題を素通りするようなサミットが開催されうるだろうか。

 にわかには信じがたい話だが、実は、「正面から危機を取り上げられないほど、事態は深刻なのだ」との指摘も存在する。今回は、その指摘とその背景を検証してみよう。

東京市場12日続落をはじめ
世界中で広がる金融不安

 まず、サミットの開幕直前の世界経済と金融・資本市場の状況をおさらいしておこう。

 最初は、東京株式市場だ。7日月曜日のサミット開幕を控えて、東京市場は前週末の4日まで実に12日間の連続安を記録した。これは、1954年4月28日からの15日続落以来、54年ぶりという長期的な下げである。ちなみに、この年は、旧ソビエト連邦の首相スターリンの重態説が流れ、朝鮮戦争特需が無くなって復興の原動力が弱まるのではないかとの連想から、株式相場が再三売り込まれた年だった。つまり、今回、東京株式市場は、半世紀ぶりの日本経済の国難を嗅ぎ取っていたと言える。

 ニューヨーク市場では、米国株がすでに7月2日の段階で、証券大手のベアー・スターンズが破綻した「3月危機」を下回り、23ヵ月ぶりの安値を更新した。

 米労働省がこの日公表した労働統計によると、6月の非農業部門の雇用者数は6万2000人の減少と6ヵ月連続のマイナスを記録。米国ではもともと「月間10万人の増加がないと経済成長はない」とされており、この落ち込みが個人消費の足を引っ張るとみられている。

 不動産市況の低迷も重症だ。エコノミストの間では「もはやサブプライム・ローン問題ではなく、プライム・ローン問題と呼ぶべきだ」との指摘が増えている。というのは、不良債権化する債権に着目すると、低所得者向けのサブプライム・ローンが元凶という限定的な段階はとうに過ぎたと言うのだ。現状は、金融機関によって、かつて優良融資先だった債務者の担保物件を差し押さえるケースが急増しており、プライム・ローン問題と言うべき段階を迎えているからだ。