受験シーズンを前に知っておきたい
東京23区の気になる「学歴格差」
大卒者が多い千代田区、短大卒者が多い世田谷区、そして高卒者が多い足立区――。これらは、東京23区を「住民の学歴構成」というポイントから見た際の特徴である。後ほど詳述するが、これらの事実は『国勢調査』のデータが基になっている。
日本の自治体の中で「一人勝ち」と揶揄される東京23区にも、実は大きな「格差」が存在している。その一例が、筆者が先日、ダイヤモンド・オンラインに寄稿した記事「港区の所得水準は足立区の3倍!?東京23区『びっくり格差』ランキング」だ。当記事は、東京23区における意外な「所得格差」について述べたものだった。「その所得格差はトップの区と最下位の区で3倍」というデータに、衝撃を覚えた読者も多かったようだ。
しかし、所得同様、如実にその格差が現れる数値がある。それが「学歴」なのである。一極集中が進んでいるはずの東京にも、大きな格差が存在していることがここからも見えてくる。
我々一般社団法人東京23区研究所は、常日頃から調査・研究、データベースの構築などを通じて、東京23区に関する情報を提供している。その研究成果をまとめ、昨年、著書『23区格差』(中公新書ラクレ)を上梓した。お蔭様で、1月4日現在“6刷”と好評をいただいている。これは、自分の住んでいる地域が他の地域と比べてどんな特徴を持っているのか知りたいという、読者のごく自然な欲求にマッチしたからだと考える。
むろん、「格差」という言葉に抵抗感を覚える読者もいるだろう。筆者としても、格差全てを肯定するつもりはない。しかし、東京においては、格差によってそれぞれの地域に「個性」が生まれていることも事実だ。たとえば人々は、所得水準が高く富裕層が多そうな地域にばかり集まるわけではない。所得ランキングで下位に位置する地域の庶民的な雰囲気に魅力を感じ、そこを選んで居住する人もたくさんいるだろう。格差を知ることは、その地域の魅力を再発見することにつながるのだ。筆者は日々そんなことを考えながら、東京23区の実態を研究している。
今回は、間もなく本番を迎える受験シーズンに合わせ、世間の注目度が高いと思われる東京23区の「学歴格差」について、拙著『23区格差』の中で紹介した内容を基に、そのトレンドを紹介したい。大学入試も1月16、17日に予定されているセンター試験を皮切りに、いよいよ佳境を迎える。お隣の韓国ほどではないにせよ、受験生本人はもとより、受験生を抱える家族にとっても、ピリピリ・ハラハラがしばらく続くのではないだろうか。