前回前々回と大反響を巻き起こしたが、今回から実践編です。ノルマがあるのに動かない部下や言っても聞かないスタッフに悩んでいるリーダーはじつに多いです。やるべきことを伝えたとしても、それが積極的で自発的な行動にはつながりません。それでは、目標達成は困難です。ここでの問いは、「どうしたら、部下は自ら動いてくれるのか?」です。新刊『トヨタの伝説のディーラーが教える絶対に目標達成するリーダーの仕事』から、その問いに答えていくとします。

自発的な行動を促す

 リーダーになった人は、「どのようなコミュニケーションをとったら、部下はやる気になってくれるのだろうか」と悩んでいるのではないでしょうか。

 トップダウンで厳しく指示命令したほうがいいのか。あるいは優しく丁寧にお願いしたほうが効果的なのか。はたまた情熱的に攻めるべきか……。試行錯誤している人もいるかもしれません。

 しかし、本当に大事なのは、話し方や言葉の選び方ではありません。

人は「言葉」で説得されたときではなく、「心」で納得したときに動くからです。

 ひと昔前は言葉だけで十分でした。中高年世代の方ならわかるかもしれません。上司は「やれ」のひと言で、部下はそれに黙って従っていました。

 でも、今はそういう時代ではありませんよね。今の若い世代の人たちは、上司がいくら言葉で言っても、動いてくれません。上司という立場を振りかざして、強い言葉で無理やり言うことを聞かせようとすれば、部下はあっさりと辞めてしまうかもしれません。

 もちろん部下だって給料をもらう身分ですから、上司に対していちいち口答えすることはないでしょう。口では「はい、わかりました」と答え、一応言われた通りにはやろうとします。

 しかし、上司の言ったことが完全に腹に落ちてはいませんから、積極的で自発的な行動にはつながりません。

 前回、「行動力には自発的なものと強制的なものがある」と説明しましたが、自発的な行動と、他人に強制された行動、どちらがより高い成果につながるかといえば、間違いなく自発的な行動です。

他人に強制され、納得感のないままでは、上っ面の仕事しかできないからです。

 たとえば顧客に対する提案1つとっても、マニュアル通りに上っ面で行うのと、自分が納得してお客様の立場に立って行うのとでは、その伝わり方は全然違ってくるはずです。

目標達成への道筋を具体的に示す

 私がトヨタ史上最高となる48ヵ月連続での販売目標達成を実現できたのは、何よりも部下のおかげです。私の方針に対して部下が心から納得してくれて、自発的に行動し、それぞれの持つ力を十分に発揮してくれたからです。

 もし、部下の心などは全然気にせず、トップダウンで「やれ」と言い続けたとしたら、決してあのような大きな成果はあげられなかったことでしょう。

 では、どういうときに部下は納得して動いてくれるのでしょうか?

 たとえば、ここに成績の悪い営業がいるとします。あなたは組織目標を達成するために、なんとしても彼に自分の成績をあげてもらう必要があります。

 そんなとき、どのようにしてやる気を起こしてもらいますか?

「週末までに1件の成約が君の目標だね。そのためには、今日は20件の訪問、30件のテレコールをこなす必要がある。よし、頑張ろう」

 普通のリーダーはこれくらいの指示をするだけです。でも、これだけでは不十分。なぜ、20件の訪問や30件のテレコールをこなす必要があるのかまで伝えていないからです。部下は「この忙しいのに、なんでそんなに訪問や電話をしなければいけないんだよ」と心のなかで反発してしまいます。

 そこで、もっと細部まで踏みこんで伝える必要があります。

「週末までに1件の成約が君の目標だね。君の見込み客からの成約率は3件に1件だから、今週末までには3件の見込み客をつくる必要がある。これまでのデータから考えると、3件の見込み客をつくるには、1日20件の訪問と30件のテレコールを今週の前半でこなさなければならない。多いと感じるかもしれないけど、チームが目標を達成するためには、君の今日の行動が必要なんだよ

 このように、「なぜ」やらなければならないか、そのためには「どのように」するかを具体的に伝えることで、部下のなかに納得感が生まれます。きちんと納得すれば、部下は必ず動いてくれるようになるのです。