経済産業省は、東京電力に1兆円規模の出資(公的資金注入)を普通株により行い、東電の2/3以上の議決権を取得(経営権を掌握)し、一時国有化しようとしています。これに対し、当事者である東電に加え、経団連や財務省までもが異論を唱えています。この状況をどう理解すべきでしょうか。

一時国有化は当たり前

 まず最初に断言しておくと、1兆円の公的資金を注入した段階で東電を一時国有化するのは、政府として当たり前の対応です。

 それは、株式価値が3000億円の企業に政府が1兆円を投入するのだから当然という数字上の議論に加え、政府が達成すべきは東京電力という一企業の再生ではなく、電力の安定供給を確保しつつ電力料金の値上げを最小限に抑えることであるという点からも正当化されます。

 そもそも、東電が4月から企業などの大口向け電気料金を17%、秋から家庭など小口向け料金を10%値上げする方針を早々に示したことが異常です。燃料の輸入コスト増大の電気料金への転嫁を最小限にすべく、資産売却やコスト削減などのリストラが徹底的に行われたのかについて、何も情報が開示されていないからです。

 そうしたデータは、東電と原子力損害賠償機構が策定中で3月に公表される総合特別事業計画(東電の再生計画)に含まれているのかもしれませんが、その情報が示されない中での値上げが理解されるはずありません。原発事故以降の対応の杜撰さから、東電の信用は地に落ちているからです。

 かつ、電気料金の値上げは今回1回で終わりません。原発事故被災者への賠償金は機構が融通した資金で賄われていますが、将来的には東電が返済しないといけません。福島第一原発の廃炉コストや福島県の放射能の除染コストもかかります。将来的には全部で数十兆円規模の資金が必要になることを考えると、将来的には更なる値上げが何度も行われる可能性が大きいのです。

 そうした事実を考えると、今回の値上げがユーザ側にとってはまったく納得感のないものなのです。東京都の猪瀬副知事が、更に100億円のコストカットが可能と主張したのも当然です。