この2月から3月にかけて、東京証券取引所に新しい7本のETFとETNが加わることになった。今までできなかった投資ができるということで、個人投資家の注目を集めている。その魅力と活用法について東証の担当者に話を聞いた。

中国本土がターゲット
人民元建て資産に直接投資できる
東京証券取引所
上場推進部主任 松本偉作氏

 投資信託と同じ商品性を持ちながら証券取引所に上場され、株式と同じように売買できるETF(上場投信)/ETNが、個人投資家の注目を集めている。株価指数やコモディティ価格への連動を目指すというわかりやすい商品性と高い分散投資効果、信託報酬や手数料などのコストの低さなど、メリットが多い。

 東京証券取引所上場推進部主任の松本偉作氏によると「世界のETF市場は拡大を続けており、日本国内の純資産残高も順調に増えています」という。例えばETF純資産残高を2008年と12年で比較すると世界全体では7720億ドルから1兆9330億ドルへ約2.5倍の増加。国内も2.52兆円から4.21兆円へ2倍近く増えている。

 国内上場の銘柄数も142銘柄に達した。内訳はETF132銘柄、ETN10銘柄だ。

新たに導入された
人民元の投資制度

東京証券取引所
上場推進部課長 木村亮太氏

 そのETF/ETNだが、この2月から3月にかけて7本が新たに上場する。「投資の自由度が大きく広がる」と東証上場推進部課長の木村亮太氏は胸を張る。新規上場するのは、日本の個人投資家が投資しにくい中国本土の株式に投資するもの、レバレッジをかけてアジア株の大きな動きを狙うもの、そして高い配当を維持している日本企業に投資する3分野である。

 まずは中国。成長が鈍化したとはいえ、他国に比べれば長期的な成長が期待できる国だが、本土市場に上場している企業の株式のうちA株と呼ばれる主要な株式は通常、中国人投資家しか投資できない。そのため、これまで海外投資家が投資するためには高いハードルを越える必要があった。しかし東証に「RQFII(人民元適格外国機関投資家)型香港ETF–JDR」というタイプのETFが新規上場することで「日本の個人投資家にも、中国株式市場の本丸へ新しいアクセス手段が提供されます」と松本氏。

 RQFIIとは、11年12月から中国で導入された新制度で、海外投資家が主に香港に流通する人民元を使って中国本土の株式や債券に投資できるようにするもの。ただ誰にでも門戸が開かれているわけではなく、現時点ではCSRC(中国証券監督管理委員会)から認定を受け、SAFE(中国国家外貨管理局)から投資枠を得た現地のアセットマネジャーだけが香港当局の承認を得て投資信託を組成できる。このRQFIIを使った初のETFが香港で上場したのは昨年夏。