変化の激しい先の見えない時代を生き抜いていける、「一生モノの自信」をわが子につけさせたい。そう願う親御さんは多いはず。

ブレない自信とは何か?
自信はどのように生まれるのか?
そのために親がしてやれることは何か?

「一生モノの自信」をつけさせる秘訣を、2011年から開成学園の校長を務められている東京大学名誉教授・柳沢幸雄先生に、うかがいます。

伸び続ける子の「自信」とは

――昨今、自信のない子どもが増えていると言われます。
そもそも“自信のある子”と“自信のない子”では、何が違うのでしょうか。

柳沢 自信というのは、“成功体験”から生まれます。ですから、自信のある子どもというのは、大なり小なりの成功体験を持っているということになります。しかし、それらがすべて“ブレない自信”につながるかといえば、一概にそうとは言えません。

――どういうことでしょうか?

柳沢 たとえば、テストや試験勉強のように“与えられた課題”をこなすことで得た自信というものは、もろく崩れやすい。ある意味、テレビゲームをクリアしているのと同じことです。重要なのは、自らの意思で選んだもので「できた!」という達成感を得られること。そこで得た成功体験こそが、ブレない“一生モノの自信”になります。

 最近は、「冷めた子どもが多い」などと言われますが、それは彼らが“本物の自信を感じる瞬間”を経験していないから。与えられたものを黙々とこなすことで自分の頭の良さを維持しているだけでは、本当の自信は生まれません。自分から“これをやりたい”と情熱を持って何かに取り組み、それが上手くいった時、努力が報われたと感じて自信につながるんです。

柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
東京大学名誉教授。開成中学校・高等学校校長。シックハウス症候群、化学物質過敏症に関する研究の世界的第一人者として知られる。1947年、疎開先・千葉県市川市の母の実家で出生。1971年、東京大学工学部化学工学科を卒業後、日本ユニバック株式会社にシステムエンジニアとして勤務し、激務のかたわら、週15時間英語の勉強に打ち込む。1974年、水俣病患者を写したユージン・スミスの写真に衝撃を受け、化学工学を勉強すべく、東京大学大学院工学系研究科の修士課程・博士課程に進学。この頃、弟と一緒に学習塾の経営を始める。東京大学工学部化学科の助手を経て、1984年にハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の研究員の職を得て、家族を連れ渡米。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の助教授、准教授、併任教授として空気汚染の健康影響に関する教育と研究に従事、学生による採点をもとに選出される「ベストティーチャー」に数回選ばれる。1999年、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻教授に就任。2011年より現職。