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ハーバード・ビジネス・レビュー読者と考える「働きたくなる会社」とは

「働きたくなる会社」とは何か?
仕事のやりがいとは? 報酬とは? 仕事の成果とは?
モノからヒトに市場評価が変わる時代、企業が人材に知的能力を最大限発揮してもらうためには、「働きやすさ」を再定義する必要がありそうです。

そんななか、「100人に100通りの働き方がある」と、社員の働き方の多様性を認めた、ユニークな企業として知られるのがサイボウズです。社長の青野慶久さんが書かれた『チームのことだけ、考えた。』を読むと、同社は、「働きたくなる会社とは何か」を考える「ネタの宝庫」かもしれない。サイボウズを通して日本企業の未来について、読者と一緒に考えてみたいと思いました。

今回はその第4回、「サイボウズの未来は、日本企業の未来なのか?」をテーマにします。Part1は同社の青野社長、山田副社長とDHBR編集長・岩佐との鼎談、Part2は社員の方々と読者との討論をお送りします。

>>前回までの討論はこちら
>>Part2 DHBR読者 VS サイボウズ

岩佐文夫
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)編集長

SPECIAL Event Report
DIAMOND Harvard Business Review
サイボウズの未来は、日本企業の未来なのか?

岩佐:
ユニークな企業として知られるサイボウズを題材に、DHBR読者が仕事のやりがい、報酬、成果とは何かを徹底討論してきました。そこで生まれた疑問に対して、今度はサイボウズ社員が真正面から討論し返答する。そんなリレー形式の討論をこれまで実施してきたわけです。

ここで簡単に前回までの討論の流れを振り返ってみましょう。

最初の討論(1st Question)で、DHBR読者が、「市場価値」で給与を決めるというサイボウズの人事制度について意見を交わし、「自社特有の社内スキルだけを身につけた人材はどうすべきか?」という疑問をサイボウズにぶつけました。

対するサイボウズの答え(1st Answer) は、「市場性がない人は絶対にいない」。そして「100人100通りの働き方があり、自分の人生をいかに幸せに生きるかが大事」と回答。そしてDHBRに対して、「自社を"いい会社"と言う社員が集まる会社に死角はないか?」という質問を投げました。

第2回のDHBRの討論(2nd Question)では、「いい会社」とはどういうものか、白熱した議論が交わされ、最後にサイボウズへ「働き方を多様化することで、世界一のグループウェアを生み出せますか?」と問題提起しました。

その質問にサイボウズ(2nd Answer)は、「知らんがな(笑い)」と言いつつも、最終的には「強い理想への共感と多様な個性の掛け合わせで世界一を目指す」と力強く回答。そして今度はDHBRへ、「なぜみなさんは、サイボウズに成長やイノベーションを求めるのですか?」と身も蓋もない質問を投げかけました。

第3回のDHBR討論(3rd Question)では、成長やイノベーションについて議論が紛糾。そしてサイボウズに対して、「チームワークあふれる社会を創るのに、グループウェアで世界一になる必要はあるんですか?」と新たな議題が浮かびました。

サイボウズはこの問いに対して(3rd Answer)、「現在『チームワークあふれる社会を創る』のほうが『グループウェア世界一』よりも優先度が高いと思われる」「サイボウズが自他ともに認められる『本当によいチーム』になって、そのチームワークを世に広げていけば『世界一』に近づける」と答えています。

ここまでの3回ずつの討論を経て、私も読者もサイボウズをより理解した面もありますが、新たな疑問も浮かんできました。そんなことから今回、DHBRとサイボウズの直接対決となったわけです。まずは、私からサイボウズの2トップに問いかけてみました。

青野社長は人に興味がないのか!?

岩佐:
青野さんの著書『チームのことだけ、考えた。』を読んで感動したのが、このリレー討論のきっかけです。お二人はこれまでの流れを見て、どう思いましたか?

青野慶久さん

サイボウズ 代表取締役社長

あおの よしひさ●1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。2011年から事業のクラウド化を進める。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)がある。

青野:
すごく面白かったですね。サイボウズの人事制度はまだ半分もできていません。もっと膨らませたいところがあります。今回の討論ではそこにいろんな視点を与えてくれました。

山田 理さん

サイボウズ取締役副社長 兼 CYBOZU CORPORATION(サイボウズUS)CEO

やまだ おさむ●1992年3月大阪外国語大学卒業後、日本興業銀行(現:みずほ銀行)入行。市場部門と法人営業部門を経験した後、2000年1月にサイボウズ入社、財務責任者として同社IPOの実務を全面的に実施。事業部長の任に就き、人事部門の責任者として一貫して同社の人材採用戦略、人事制度・教育研修制度の構築を手掛ける。2007年4月に取締役副社長に就任。2014年9月より、米国での事業拡大に機動的に対応するため、US事業本部を新設、US事業本部長に就任。同時に米国に赴任、現在に至る。

山田:
人事制度や会社のことをみなさんが真剣に議論してくださり、普段から深く考えているんだなと思いました。僕は1992年に銀行からサイボウズに入って、人事や法務などに携わってきました。トライ&エラーでやりながら、試行錯誤しているところです。「日本の人事部」くらいのノリで、サイボウズを実験台としていろいろなことをやっていきたいと思っています。

岩佐:
青野さんの著書には、「山田はたぶん事業に興味がない」と書いてありました。あれは合っていますか?

山田:
合っていますねぇ。

(笑い)

「そうは言っても、本当は少しぐらい興味あるんだろう」と思われるかもしれませんが、みなさんが思っている以上に興味ないんですよ。
ただ、サイボウズという会社が提供しようとしている「チームをよくすること」という価値、これにはハマるんですよね。

岩佐:
一方の青野さんは、僕から見ると「ソフトウェア大好き」なオタク少年。山田さんは、「青野は人とコミュニケーションを取るのが嫌いだからグループウェアを作っているんだ」と言っていました。

青野:
あー……当たっていますね。僕はたとえば3連休あったら、3日間家にいられますよ。全く人に会わなくても平気なタイプです。

岩佐:
そういう人って組織やチームワークというものを、うざいと考えるんじゃないですか?

青野:
僕は物理現象を見るような目で組織を見ているところがあります。ソフトウェアには「こう書けばこう動く」という面白さがあるのですが、それと同じように、人間社会ならどういうルールを適用したらどう動くんだろうかと、法則を探しながらやっている。それで実際にやってみたらやっぱりそうなった! みたいな。

岩佐:
じゃあ一人ひとりに対する興味ってないわけですね。

青野:
いえ、ないかと言われると……ゼロじゃないですよ。

(笑い)

なぜグループウェアを選んだのか?

岩佐:
いろいろな経営者がいますが、人に対して興味がある人とそうでない人がいます。青野さんは人にはあまり興味がない人。パーティーに参加しても知り合いを増やそうなどという気はないでしょう。

青野:
そうですね。立食パーティーではできるだけ話しかけられないポジションに身を置きます。

(笑い)

岩佐:
そんな青野さんが、なんでチームワークを世界に広げようとしているのですか?

青野:
グループウェアを選んだきっかけがありまして……。1994年くらいに、インターネットが世に出始めてびっくりしたんです。絶対にこれは世界を変えるぞと。そこでたとえばサイバーエージェントの藤田晋さんは、ネットメディアに使えると思ったんでしょう。また楽天の三木谷浩史さんは、物が売れると考えた。一方僕は、「情報が共有できる」と思ったんです。

松下電工にいた時に、僕は下っ端だから電話を取る係でした。取ったらたいてい課長宛てなのですが、課長は出張がちなので在席していない。それを1日何回も説明しないといけなくて、腹が立つわけですよ。説明しないようにするには、課長がいないという情報を共有できる状態になっていればいい。インターネットを使えば、それができる。そういうものを作りたかったのが、グループウェアを作ろうと思ったきっかけです。

岩佐:
結局、ムダなコミュニケーションが嫌いなんですね。

(笑い)

市場で勝たなくても、世の中を豊かにする勝負に勝ちたい

岩佐:
青野さんの本で一番共感したのは、「100人100通りの人事制度」。つまり一人ひとりに個性があるという発想。これは僕も大好きなのですが、一方で企業は市場で勝たなければいけないわけです。一人ひとりを大事にすることと市場で勝つこと、これは両立できるんでしょうか。山田さんそのあたりは?

山田:
正直、わからないんですけどチャレンジですよ。会社ってなんのためあるのかというと、社会貢献するため、世の中をよくするためにあると思います。僕らでいえば、チームワークあふれる社会にするためにある。

従業員の人件費を削れば利益が上がり、株価が上がって株主は喜びますが、でもそうしたら株主は株を売ってしまう。そういう世界を見てきて、自分たちがどうしたいかに行き着いたわけです。それは、株主、お客さんは当然、社員も幸せにすること。それが自分たちの社会貢献なんです。

世の中の人が欲しいものを提供して、かつ社員が喜んでいれば、そんな会社がつぶれるはずはありません。だから僕らはマネーゲームの世界に生きてはいますが、決して勝者である必要はない。ただし敗者になったら継続できないので、負けないようにしないといけません。世の中を豊かにする勝負があるとすれば、それには勝ちたいですね。

岩佐:
社会を豊かにするということには、社員がハッピーになることも当然含まれていると。青野さんは?

青野:
よく社員満足度の高い企業っていえば、地方の中小企業だったりする。売上はそんなに伸びていなくて、でも地元には支持されているとか。僕自身はそういう状態を目指してはいません。

僕は競争心が強いんです。グーグルやマイクロソフトと世界の市場で競ってみたいいう気があります。日本チャンピオンで終わるくらいなら、ボロ負けしてもアメリカで世界的企業と競争したい。

ただ残念ながらグーグルと同じように、スタンフォード大学の優秀な人をたくさん集めて技術で圧倒するというようなやり方はできません。だから違う戦い方を発明したい。

たとえば週3日しか働かない人や、会社に出社しないママさんやらばかりなのに、なんかすごい会社。こういう戦い方だと逆にグーグルにはマネできない。それを模索しているところです。

岩佐:
でも、IT業界の競争では、優秀なエンジニアを集めることは重要なのでは?

青野:
そうですね。たとえば検索エンジンの分野では僕たちは戦えません。あれはもう数学の世界で、数学者をたくさん集めないといけない。

一方グループウェアはちょっと違って、僕らの組織作りと合わせてグループウェアを作って、その使い方まで熟知しておく必要がある。そうじゃなければいいグループウェアをお客さんに届けられません。

これはたぶん数学者にはできないこと。僕らのやりたいチームワークという分野とグループウェアがマッチしているからこそ、世界で勝負できると思っているんです。

岩佐:
優秀な人を集めるだけではできないのがグループウェアの開発なんですね。人間的な部分を反映させる作りが必要と。

青野:
19年間グループウェアを見てきました。お客さんを訪問すると、ものすごくうまく活用して社風まで明るくした会社もあれば、スケジュール共有すらちゃんとできない会社もある。つまり機能ではないんです。

グループウェアは、使い方まで含めて提供しないとお客さんをハッピーにできない。そこまで覚悟を決めてやるんだったらこの市場で勝てる。それはグーグルはやらないことだと思います。面倒くさいので。

グーグルがグループウェアで世界を席巻する?

岩佐:
デファクトスタンダードとか、ウィナー・テイク・オールといったかたちで、いい製品ではなく、より使われた製品が勝つということがあります。グーグルがグループウェアを作れば、それがなんじゃこりゃみたいな出来であっても、市場を席巻してしまう可能性はあるのでは?

青野:
あるなしで言えばあると思いますが、全然戦う余地はあります。そこは「多様性」というキーワードです。会社って多様ですよね。規模も業種もカルチャーも。それらすべてを1つのグループウェアで幸せにするのは、相当難しいこと。

iPhoneみたいに個人が持つものだったら、バーッと流行ってみんなが使うということはありますが、グループウェアはそうはいかないというのが、19年やってきての実感です。

やり続ける、考え続ける、時代に合わせて変え続ける。それをしないとグループウェアではデファクトスタンダードにはなれない。グーグルがどんなに賢くても、あっという間に市場を取るのは難しいと思います。

岩佐:
でもブラウザにしろERPにしろ、ソフトウェアの分野では最終的に1つの製品が独占する傾向にあります。グループウェアでその可能性は?

青野:
なくはないですけど……。まあ僕らがそれをやろうと思っています。

岩佐:
そういうことをやろうとする組織って、意思決定や成長のスピードを大事にすると思うんですよ。でも山田さんは、「なぜみなさんは、サイボウズに成長やイノベーションを求めるのですか?」なんて言いますよね。そんなことでいいんですか?

山田:
15年前に僕がサイボウズに来た時、グループウェアなんてすでに使い古された言葉でした。それが今でも、まだ売れている。それから当時ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)と呼んでいたものが最近クラウドと呼ばれるようになり、またユーザーが増えている。でも日本にはまだまだクラウドが浸透していないと言われる。これくらいのスピード感なんですよ。

コンシューマー向けは流行り廃りが激しいのですが、僕らのようなB2Bは長期的にやって、時代の流れをとらえてやっていくところがあるので、早く行きすぎていいことはないんです。そういうビジネスの特性が当社の組織作りとマッチしているのかもしれません。

もちろんガーッと行かなければならない時もあるから、その時のためにも基盤をちゃんと作っておきたい。そういう考えもあって、スピードや成長よりも、じっくりと組織を作っていくほうがいい。製品開発もあまり焦っていないですよね。

青野:
そうですね。機能をいっぱい入れれば便利になるという話でもないですから。世界一を目指してはいますが、売上・利益で目指しているわけじゃありません。たくさんの人に使われるグループウェアメーカーになりたいんです。

岩佐:
それなら無料で配ってもいいということ?

青野:
そうです。無料でも、製品の提供を継続していければいい。寄付だけで成り立っているWikipediaは理想形ですね。

それが戦略でもあるのです。売上をどんどん上げたい、事業成長させたいという人にとっては、グループウェアって面白くない分野。だからこそ僕らが世界一に突き抜けられる可能性がある。売上・利益を捨てて、赤字にして喜んでいますから。

(笑い)

もし世界一になったらどうする?

岩佐:
ポリゴン・ピクチュアズという3Dアニメ制作会社があります。昔は小さな制作会社でしたが、「いつかピクサーに使われるような会社に」と壮大な目標をかかげていたら、その通りになっちゃった。今やハリウッドのアニメ映画は、この会社なしでは成り立たない。それくらいすごい会社です。

しかもアニメ制作会社といえば劣悪な労働環境が普通ですが、ポリゴン社のアニメーターは徹夜なんてしないし、残業もほとんどない。子供を産んだ女性も仕事を続けられるようにと、社内の制度も整備している。さらに工程管理をしっかりしていて納期は絶対に守る。

この会社の経営者がいま悩んでいることとは、世界一になるという目標を達成して、次の目標がなくなったことだそうです。サイボウズもそうなったらどうしますか?

青野:
たぶん次の目標を作ると思います。じつは2014年末ぐらいから1カ月ほど、落ち込んでいた時期がありました。なぜかというと、売上がちゃんと伸び始めたから。それでガッカリして……。

山田:
何を言っているんですか?

(笑い)

青野:
それまではクラウド事業の立ち上げのために3年くらい必死になっていて、ようやく売上が上がって「ああよかった」と思った瞬間に、「こんなことをやりたかったんだっけ?」と疑問が湧いたんです。

それで、やはりサイボウズの原点である社会を変えることを目指さなければと。そしてワークスタイルムービーの制作のような、社会を変える活動を増やしながら、もっと大きな目標に向かっていくことにしました。これを説明すると、みんな共感してくれました。

「会社は利潤を追求する」なんて誰が決めた?

岩佐:
お二人のお話を聞いていると、NPOに限りになく近い感じもしますね。

山田:
ある意味NPOかもしれないですね。会社は社会貢献するためにあり、それを継続するためには利益を上げる必要がある。その利益でまた、いいものを作る。よく学生とかに、「御社のCSR(企業の社会的責任)は?」と聞かれたりするんですが、うちはCSRしかしていないですから!

(笑い)

青野:
NPOは利益を求めない、株式会社は利益を求めるというのが原則。でもそれ、誰が決めたんだって話。

山田:
そうそう。

青野:
中学校の公民の教科書に、株式会社の目的は利潤の追求って書いてあり、僕はそれを信じていました。でも自分で株式会社を立ち上げると、その必要あるのかな、と思いました。別に利潤を追求しなくてもいいんじゃないの?と。そこからは僕らの新しいチャレンジで、資本主義の考え方を揺さぶっていきたいなと。

岩佐:
青野さんは株主の前でもそういうことをおっしゃっていますからね。

青野:
先週の株主総会でも「売上・利益は追求しません」と言いました。株主もだんだん慣れてきましたね。

(笑い)

岩佐:
最初は株主からの不満はあったんですか?

山田:
最初はもう、よくあるベンチャー企業ですから、「打倒マイクロソフト」だとか、「何年で売上どれくらい上げる」とか、それこそ計画に日付を入れてやっていました。

株主総会でも、「株主利益のために」と言っていました。自分たちのKPI(Key Performance Indicator :企業目標の達成度評価における主要業績評価指標)は売上・利益に置いていましたし。

岩佐:
その頃は売上・利益を目指していたけど、今はステージが変わってきたということですか。生きるか死ぬかという段階を通り抜けたから、そういうことを言えるのかもしれませんね。

「時価総額」では幸せになれない

青野:
2005年くらいに9社を買収して、売上が4倍になったことがありました。その時に、はたと「何がしたかったんだっけ?」と気づきました。買収したのに僕はその会社に興味がなくて、マネジメントがめちゃくちゃになって。本当、何をやっているんだろうという時期でした。

山田:
幸か不幸か、僕たちがうまくマネジメントできなかったからこそ、学んだこともあります。買収によって株価が上がり、時価総額が今は180億円ですが、当時は1200億円くらいありました。会社が大きくなったにもかかわらず、社内はごたごたしていて、誰も幸せそうじゃない。これは何をやっているんだろうと。

岩佐:
時価総額1200億円の頃より、今の180億円のほうが会社としてはいい状態ですか?

青野:
はるかに。時価総額なんて1200億円より180億円のほうが価値がありますよ。それだけ株価が安いと、みんなが株を買えるということですから。以前社員に「青野さん、株価を上げるようなこと言わないでください。僕、必死に買っているんですから」って言われたことがありますよ。

(笑い)

岩佐:
社会に貢献するというのが会社の目標だと、壮大すぎて社員には実感しづらいのではないでしょうか。自分たちの仕事が社会をよくしていると、どういう時に実感しますか?

山田:
嬉しいのは「サイボウズっていい会社だよね」とみんなが言ってくれる時ですが、それで社会に貢献していると言えるかどうかは、なんとも実感しにくいところはあります。

青野:
以前僕は大企業に勤めていましたが、社会を引っ張っていると感じたことはありませんでした。今はこんなに会社が小さいのに、これだけ注目されている。そこに未来を感じるんです。実際に社会を引っ張っているからだと思います。そこに未来を感じるんです。

サイボウズの規模は小さいけれど、大企業の人が話を聞きに来たりします。また、政治家の方も興味を持ってくれて、政府のプロジェクトに呼ばれたりもする。社会を動かし始めていると感じます。これでいいんだなと。

自分たちの理想形を追求していけば、21世紀の後半はこれがスタンダードになってくるんだろうなと思っています。

岩佐:
でも社会って冷たいところもありますよ。何かあったら一気に叩かれます。

青野:
そうですね。不倫はしないようにします。

(笑い)

山田:
そこだけですね。

(笑い)

理念を「石碑」に刻むな

岩佐:
これまでの討論のなかで、「青野さんは後継者をどう考えているか?」という疑問が挙がりました。これまでのサイボウズは、青野さんが会社を引っ張ってきた印象が強いのですが、次の世代のことはどうするのか。ご自身がいなくなった後のことを準備していますか?

青野:
山田と決めた言葉は、「理念を石碑に刻むな」。要するに自分の後の代に自分の理想を引き継ぐなということ。

チームワークを世界に広めたいのは、あくまでも僕と山田の野望です。次の世代を縛ってまで引き継がせることには違和感があります。後継者なんていなくてもいい。リセットして考え直してくれたらいいと思っています。

岩佐:
でも会社が解散したらユーザーは困るでしょう。

山田:
会社がつぶれることはありますが、その会社を他の会社が買収して、サービスが継続することってありますよね。サイボウズのサービスがいいものであれば、それを引き継いでくれる会社が必ずあるはずなんです。

僕らがろくでもないものを作っていたら、消えるはず。そうじゃないなら消えない。誰が経営するかはまた別の話だと思います。

岩佐:
新しい社長がグループウェア事業を売却してもいいと。

山田:
別にいいです。サイボウズのグループウェアを使ってくれているお客さんがいるんですから、もし売り出したら買いたい企業はいると思いますよ。でも、会社を残すということには注力する必要はないんですよ。

青野:
そうそう!

山田:
会社を残すことにどれだけの意味があるのか。やりたいサービスをやる仕組みとして、会社というかたちが今までは上手くいっていたということであって、本当は会社でなくてもいいんです。

Wikipediaは会社じゃないし、Linuxだってコミュニティみたいなもの。そういう世界になってきているのにもかかわらず、会社という形態を残そうと必死になっている人も多い。これには違和感があります。

青野:
永続する会社がいい会社という考え方は疑っていいと思う。会社って実体がないバーチャルな存在なんですよね。人が集まって、これをサイボウズと呼ぼうと決めただけのものですから。永続しないといけないという発想はおかしい。

本当に大事なのは、そこに集まっている生身の人間が盛り上がっているかどうかなんですよ。生身の人間たちがつらい顔をしているのに、会社を必死に残そうみたいなのは、イケてないなーと思うんです。

岩佐:
ありがとうございました。ひとまずお二人との鼎談は終わります。Part2では、DHBR読者とサイボウズ社員の方々とで徹底討論します!
>>Part2 DHBR読者vsサイボウズ社員へ

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