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Keep Watch! 時代の空気を経営のヒントに
【サイコス社長 青葉哲郎 第6回 世界で徐々に広がりつつある「大義」支援マーケティング】

 

 「売り手よし、買い手よし、世間よし」。近江商人の理念「三方よし」が、今世界的なトレンドだ。米Coneの調査によると、米国の消費者41%が過去12ヶ月以内に「社会・環境に配慮した商品であることを理由に商品を購入」し、その83%が「個人的に配慮したいと思う事柄に利益をもたらすような商品が市場に出回ることを望んでいる」。消費者は、売り手と買い手だけでなく、その取引が社会全体の幸福につながることを期待している。

 そんな消費者の気持ちを逆手にとって購買意欲を高める手法を「コーズマーケティング(Couse Marketing)」と呼ぶ。コーズは「大義」という意味。企業がマーケティングを通じて特定の「大義」を支援するというものだ。

 コーズマーケティングの始まりは、米国のカード会社アメリカン・エキスプレスが1981年に実施した芸術団体支援キャンペーンといわれている。自由の女神の修復資金を集めるために、クレジットカード利用額の1%を修復資金に寄付するとした。多くの米国人がこのキャンペーンに賛同し、アメリカン・エキスプレスで買い物をしたという。

 こうした手法を取り入れる日本企業も出始めている。アサヒビールの「うまい!を明日へ!」プロジェクトがわかりやすい。毎年春と秋にキャンペーンを展開し、同社の主力商品「アサヒスーパードライ」1本の販売につき1円を、環境や文化財の保護保全活動に寄付しているのだ。顧客のすそ野を広げるとともに、企業のイメージアップやブランディングにも貢献する手法であり、ジャスコ、TBC、森永製菓などの日本企業の事例も見聞きするようになってきた。

 最近ではソーシャルメディアを活用したコーズマーケティングも登場している。「1Lごとにアフリカに清潔で安全な水が10L生まれます」のキャッチコピーで有名なミネラルウォーターVolvicの世界的キャンペーンも、2010年から「Twitter」で1フォローごとに、「ブログ」では自身のブログにブログシールを貼るごとに、ダノングループより支援金が寄付される仕組みを導入した。マイクロソフトの検索エンジンBingは、メキシコ湾の原油流出事故の際に、「#BingforGulf」というハッシュタグを付けたつぶやきを投稿するごとに、1ドル寄付できるキャンペーンを展開した。直接商品を購入しなくても寄付につながる施策が、企業のプロモーションや広告として認知されるようになった。米国では、コーズマーケティングが企業のスポンサーシップ広告の中で、最も成長率の見込める分野だという調査結果もでている。

 一方で批判的な見方もある。個人の善意を利用した金儲けはいかがなものかという倫理的な意見や、結局のところ大量生産・大量消費の従来の構図と変わらないではないかという見解だ。しかし企業が消費者や社会と真摯に向き合い、できることからはじめようという姿勢は評価に値するのではないか。

 今、モノが売れない時代であるのは自明だ。良い製品を作ればモノが売れるという方程式は通用しない。プロダクトアウトやマーケットインといった企業のマーケティング手法も見直しを迫られている。こうした中、コーズマーケティングという手法は、単に製品を作って宣伝するのではなく、考え方や社会貢献といった大義、そして消費者とのきずなの構築という一連のストーリーを生み出すことで、消費者の購買意欲をかき立てる。忙しくて賢い現代の消費者は、社会貢献を1つの消費スタイルとして、受け入れはじめたばかりだ。

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