福田首相の突然の辞任表明は、海外でも衝撃を持って受け止められた。英「エコノミスト」誌元編集長のビル・エモット氏は、日本の政治は麻痺したと指摘したうえで、衆参のねじれ解消のために、一度民主党に政権を任せてみるべきだと語る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン副編集長 麻生祐司)
ビル・エモット Photo by Justine Stoddart |
―福田首相の辞任をどう受け止めた?
国家元首の“サプライズ辞任”は、衆人環視の英国の政界では起こりえないことなので、ただただ驚いている。
英国における唯一の例外は、1976年のハロルド・ウィルソン首相(当時)の辞任だが、彼はその後深刻な病気であったことが明らかになっている。英国の政治の特徴はオープン性とパブリック性であり、時としてメディアの報道が行き過ぎることもあるが、与党内での権力の移行はガラス張りの中で進められている。それに対して、日本の密室政治はとにかく分からないことだらけだ。
ただ、タイミングの問題は別として、辞任という行為自体は当然の帰結だったと思う。あれほどまでの不人気(内閣支持率の低迷)、そしてなにより“衆参のねじれ”を考えれば、辞任はもっと早くてもおかしくなかった。
―安倍、福田と二代続いてのサプライズ辞任で日本は国際社会での信用を落とした。
そんなことを心配している暇は、今の日本にはないだろう。そもそも衆参のねじれが原因で、国会運営が行き詰っているわけだから、このまま福田政権が続いていたとしても、信用に傷はついていた。
むしろ今回のことを奇貨として、衆院の解散・総選挙を急ぐべきだ。たとえ民主党を利するとも、政策履行能力のある政府を作ることが、日本にとって、最良の道だ。
―民主党に、政権運営能力はあるとみるか。
率直に言って、あるかないかは、任せてみなければわからない。乱暴な言い方だが、委ねてみてダメならば、各党入り乱れての本格的な政界再編が起こるだけだろう。それでも、今のまま停滞しているよりもましだ。後で振り返れば、政権交代は日本の政治に結局必要なプロセスだったということになるだろう。